偏愛的プレミアリーグ見聞録

「Manchester United increase offer for Borussia Dortmund winger to £72.6m（マンチェスター・ユナイテッドがドルトムントへのオファーを7260万ポンドに増額/BBC）」
「Man Utd in advanced talks to sign forward from Borussia Dortmund（マン・ユナイテッドがボルシア・ドルトムントのフォワードとの契約交渉を前進させる/スカイスポーツ）」

2014年1月、バーゼルとの話がまとまる寸前だったリヴァプールに対して、チェルシーが好条件のオファーで急襲し、モー・サラーを強奪。2018年の夏には、メディカルチェックを完了させた後にリヴァプールが翻意し、ナビル・フェキル獲得が破談となりました。2020-21シーズンの終了後にプレミアリーグを離れたジニ・ワイナルドゥムは、バルサとの契約にサインする寸前でパリからのオファーに惹かれ、乗り換えを決意。トランスファーマーケットは、クラブの公式サイトで正式に発表されるまで何が起こるかわかりません。

「BBC」と「スカイスポーツ」が同時に配信した「ジェイドン・サンチョのマンチェスター・ユナイテッド入団は、ほぼ決まり」という記事で、喜んではいけないのかもしれません。「BBC」はサイモン・ストーン、「スカイスポーツ」はダルメシュ・シェスと、それぞれ看板記者によるレポートですが、事件は彼らからも見えないところで起こります。ドルトムントが期限としている7月23日まで1ヵ月あり、予断を許さない状況ではありますが、ポジティブな記事に触れるとついついテンションが上がってしまいます。

「BBC」は7260万ポンド、「スカイスポーツ」は「アドオンを含む7500万ポンド超」と表現の違いこそあれ、「ドルトムントの希望額に近いが、ドルトムントの希望通りではない」という見方は一致しています。交渉のポイントは、総額ではなく初期費用となっており、アドオンの比率を高めたいプレミアリーグのクラブに対して、ドイツは最初に支払われる額を吊り上げようとしているようです。

「ジェイドン・サンチョとドルトムントは紳士協定を結んでおり、獲得するクラブが評価額を満たせば移籍できる」「マンチェスター・ユナイテッドとジェイドン・サンチョは1年前に個人合意に至っており、今回も問題はない」「サンチョとの契約が2023年までとなっているドルトムントは、契約が残り1年になってから対応するというリスクを取りたくない」。どこからどう見ても獲得できそうな状況ではありますが、グリーリッシュを獲ろうとしているマン・シティにケンカを売ったといわれる強奪王チェルシーの方向転換に要注意です。

アリエン・ロッベン、マイケル・エッシェン、ジョン・オビ・ミケル、ペドロ・ロドリゲス。ひとたび獲ると決めたら、どんな手を使ってでも目的を果たそうとするウェストロンドンに、これまで何度足をすくわれたことか。21歳のウインガーがユーロ2020から解放されたら、速攻で話をまとめてくれと祈るばかりです。

サンチョを首尾よく獲得できたら、ヴァランかパウ・トーレスを引き入れて最終ラインを強化し、ワン＝ビサカのバックアッパーを押さえるという流れでしょう。ファン・デ・ベーク、マルシアル、リンガード、ダニエル・ジェームズをどうするのかといった課題はありますが、右サイドとCBという補強ポイントをクリアできれば、ひとまず戦力的には文句なしです。まるまる1年かかった獲得交渉が実を結ぶまで、あと1歩。もうしばらく、落ち着かない日々が続きそうです。