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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ついに入団決定!アンドレ・オナナがマンチェスター・ユナイテッドを革命的に変えるといわれる理由。

「マンチェスター・ユナイテッドに加わるのは、信じられないほどの名誉だ。この瞬間を迎えるために、人生を通じて多くの困難を乗り越え、懸命に働いてきた。オールド・トラッフォードでゴールを守り、チームに貢献することは、またとない素晴らしい経験になるだろう。新たなチームメイトと、新たな野望のために戦う。新しい旅の始まりだ」

「マンチェスター・ユナイテッドには、素晴らしいゴールキーパーが築いてきた長い歴史がある。エリック・テン・ハフと再び仕事をする機会を得られて興奮している。彼がこの偉大なフットボールクラブで達成しようとしている成功は、よくわかっている。その一翼を担うためにプレイするのを待ちきれない」

アンドレ・オナナのみならず、マンチェスター・ユナイテッドも新たなチャプターを迎えているといっていいでしょう。ダヴィド・デ・ヘアが12年の長きに渡って守り続けたゴールマウスに、チームの戦い方を劇的に変えるニューフェイスが招かれました。インテルに支払う移籍金は4720万ポンド(約85億円)。公式サイトが最初のメッセージを伝えています。

サミュエル・エトオ・アカデミーで少年時代を過ごし、14歳でバルサのカンテラへ。スペインの名門ではトップチーム昇格を果たせず、2016年にアヤックスに入団しました。最初の指揮官はピーター・ボス。エリック・テン・ハフとの出会いは、2017年でした。3度のエールディヴィジ制覇、2度のKNVBカップ優勝。2018-19シーズンのCLでは、準決勝でスパーズに惜敗しています。

2022年の夏にインテルに入団すると、セリエAは3位、コッパ・イタリアで優勝し、CLはファイナル進出。オランダとイタリアで常に優勝を争ってきたキャリアは、時折プレミアリーグのTOP4から陥落するようになったクラブのサポーターの目には頼もしく映ります。超一流のGKであることに疑いの余地はありませんが、何かとお騒がせな人物であるというのも事実です。

2021年2月のドーピング検査で禁止薬物のフロセミドが検出され、最終的には9ヵ月の出場禁止処分。「誤って妻の薬を飲んだ」という主張が事実だったとしても、慎重な選手なら決して起こさないトラブルといわれれば、返す言葉はないでしょう。

ワールドカップカタール大会のカメルーン代表では、リゴベール・ソング監督とぶつかり、グループリーグのセルビア戦の出場を拒否。大会が終わると、26歳という若さで代表引退を宣言しました。インテルでも、エディン・ジェコやブロゾヴィッチとのケンカが話題になっています。ミケル・アルテタなら、プロフィールをチラ見してNGを出すでしょう。

しかしここにいるのは、5シーズンをともに過ごしたテン・ハフです。彼の性格と強みを熟知しており、カメルーン代表のような問題は起こらないでしょう。「BBC」のスタッツ比較を見ると、デ・ヘアとの違いは明確です。昨季のリーグ戦のクリーンシート率は46.3%対41.3%、1試合あたりの失点は0.87対1.05、セーブ率は77.8%対73.5%で、いずれもオナナが上回っています。

ただしこれだけなら、CBのクオリティを問題にされるかもしれません。彼らの差がはっきりするのは、ここからです。パス成功率は80.0%対72.6%、ロングパスに限定すると54.9%対44.8%。90分あたりでボールを前に運んだ距離の平均を出すと、90.3ヤード対54.4ヤードという圧倒的な差になります。90分あたりのミドルサードでのタッチ数も、0.51対0.12という大差です。

左右の足を同じように使って的確に味方につなぐ守護神は、時にはCBの前にポジションを取ってビルドアップの中心になり、ルカクやラウタロ・マルティネスを一瞬でフリーにします。いや、私が必死に訴えるより、この人の言葉のほうが納得感が高まるでしょう。CLのファイナルで相手のGKを見たペップ・グアルディオラは、こんなコメントを残しています。

「オナナはホールディングMFのようにプレイしていた」

マンチェスター・ユナイテッドの弱点のひとつは、ビルドアップが不調だったり相手に主導権を握られたりすると、最終ラインが下がりすぎて中盤との間にスペースができることでした。メイソン・マウントの運動量でプレスの強度が上がり、オナナのカバーエリアの広さを頼ってハイラインをキープできるようになれば、より攻撃的なスタイルで戦えるようになるでしょう。

懸案だったGKが、ようやく決まりました。ここまでの投資は1億ポンド強。余剰戦力を売却し、ストライカーとCBを強化できれば、来季のプレミアリーグが楽しみになります。開幕節のウルヴス戦は、新守護神のパスワークとドリブルをチェックしたいと思います。

「オナナのボールの正確さ、卓越したパスレンジ、ドリブルは、エデルソンをはじめ誰にも負けないと意見が一致している」(アレッサンドロ・スキアボーネ/イタリア人サッカージャーナリスト BBC「Andre Onana: New Manchester United signing is definition of the ‘modern keeper’」より)


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