偏愛的プレミアリーグ見聞録

月日が経つのは早いもので、プレミアリーグ2023-24シーズンの開幕まで18日となりました。ビッグ6の補強を見ると、順調組と停滞組のコントラストが明確になっています。昨季プレミアリーグで優勝を争ったアーセナルは充実。終盤の逆転で3連覇を達成したマン・シティは、暗雲が垂れ込めています。

カイ・ハヴェルツ、ユリエン・ティンバー、デクラン・ライスを引き入れたガナーズは、これといった穴が見当たりません。最終ラインにはユーティリティーが高い選手が揃っており、トーマスが残るなら中盤もOK。ブカヨ・サカを休ませたいときは、ネルソン、トロサール、ジェズスのいずれかを右にまわせばいいでしょう。

パブロ・マリ、ジャカ、メートランド＝ナイルズは既にチームを離れており、ニコラ・ペペやサンビ・ロコンガを納得のお値段で売れれば、文句なしのはなまるマーケット。起用法によって、一流にも凡人にもなるカイ・ハヴェルツがうまくはまり、2年めのファビオ・ヴィエイラと復活を期すスミス・ロウが本来のプレイを取り戻せば、攻撃力は格段に高まるでしょう。

対するマン・シティは早々にコヴァチッチを押さえたものの、ギュンドアンが去り、マフレズは退団濃厚。カイル・ウォーカー、ベルナルド・シウヴァ、ジョアン・カンセロ、ラポルテにも移籍の噂があり、最重要ターゲットのライプツィヒCBグヴァルディオルは8600万ポンドを求められています。

ハフィーニャやパヴァールといった名前が挙がっているものの、進展が伝えられるディールはなく、主力が続々と退団となった際に後手を踏む可能性があります。CLファイナルでハムストリングが悲鳴を上げたデブライネは、未だチームのトレーニングに合流できず。ビッグイヤー獲得という大きな目標を達成した直後だけに、キーマンのバーンアウトによる出遅れも懸念されます。

セカンドグループのマンチェスター・ユナイテッドも、順調といっていいでしょう。新戦力はメイソン・マウントとオナナだけですが、いずれもテン・ハフ監督が補強を熱望したポジション。彼らの好材料は、主力が全員残っていることです。懸案の最前線は、ホイルンドに絞ってアタランタと交渉中。開幕に間に合わなければ、ラシュフォードかサンチョがカバーするでしょう。

ストライカーをゲットしたら、フレッジ、マクトミネイ、ファン・デ・ベーク、マルシアルから何人かを手離し、フィオレンティーナのソフィアン・アムラバトを獲るのが既定路線といわれています。最終ラインの強度がアーセナルやマン・シティに劣るため、優勝候補とはいえませんが、プレミアリーグのTOP4キープとCLベスト8なら充分めざせるでしょう。

CLを失ったリヴァプールは、ヘンダーソン＆ファビーニョをサウジアラビアに持っていかれたのが激痛です。フィルミーノ、ミルナー、ナビ・ケイタ、チェンバレンの退団を受けて、マック・アリスターとショボスライを獲ったところまではよかったのですが…。スペイン復帰が囁かれているチアゴはどうするのか。中盤センターの経験値の激減をフォローするのは至難の業です。

ファブリツィオ・ロマーノさんによると、サウサンプトンのラヴィア争奪戦ではトップランナー。カルヴァン・フィリップス、フラーフェンベルフ、シェイク・ドゥクレ、キミッヒも候補といわれており、既にコンタクトを取った選手もいるようです。アーノルドを中盤にコンバートするなら、価格が高騰しているセントラルMFはひとりに押さえてSBを狙うという手もあります。

指揮官を代えて巻き返しを図るロンドンの2チームも、明暗が分かれています。トータル10人の余剰戦力を売り切ったチェルシーは、強化モードにスイッチ。交渉が長引いているモイセス・カイセドに加えて、長期離脱となったフォファナの穴を埋めるCBを押さえられれば戦える体制となります。キリアン・ムバッペを狙うという話は、よくあるアレですよね…？

新監督がめざす形に近づいているチェルシーに対して、トッテナムは厳しそうです。ジェームズ・マディソン、ヴィカーリオ、マナー・ソロモンという新戦力は納得ですが、出ていく可能性がある選手が12人という現状は極めてリスキーです。

ロリス、レギロン、ジェド・スペンス、エンドンベレ、ロ・チェルソ、ダヴィンソン・サンチェスは間違いなく放出候補。彼らに加えて、アトレティコ・マドリードから声がかかったホイビュルク、クロアチアに帰国するといわれていたペリシッチや、タンガンガ、ジョー・ロドン、ブライアン・ヒル、セセニョンも売られる可能性ありといわれています。

ポステコグルー監督が率いるチームは、昨季プレミアリーグで喫した63失点をいかに圧縮するかが最大のテーマ。CBを強化できなければ、ティーレマンス、パウ・トーレス、ムサ・デンベレを獲ったアストン・ヴィラや、ダフード、ミルナー、ジョアン・ペドロ、フェルブルッゲンにイゴールまで引き入れようとしているブライトンをかわせずに終わるかもしれません。

以上、プレミアリーグのビッグ6の補強について、これまでの動きと近況をまとめてみました。デッドラインデーまで、残り39日。キーマン離脱の噂が消えないマン・シティ、昨季の後半戦に在籍していた26歳以上のMF7人が全員いなくなる可能性があるリヴァプール、売却が遅れているスパーズは、間に合うのでしょうか。マーケットは最後まで盛り上がりそうな雲行きです。