偏愛的プレミアリーグ見聞録

「Philippe Coutinho could be available for €80m transfer as Barcelona seek summer sale（バルセロナが夏の売却を求めているため、コウチーニョは8000万ユーロで移籍可能）」。2018年1月に、リヴァプールに別れを告げたアタッカーは、プレミアリーグ復帰を画策しているといわれていますが、その移籍金は2年で暴落してしまったようです。フィリペ・コウチーニョ、6月で28歳。バルサに移籍した直後の半年は、ラ・リーガ18試合8ゴール5アシストと危険な存在であることを証明したものの、翌シーズンは34試合5ゴール2アシストと得点力がダウン。ドリブルとシュート力がセールスポイントの選手に、中盤を仕切ってきたイニエスタの代役を求めたのが、今ひとつフィットしなかった最大の理由でしょう。

バルサで居場所を失ったコウチーニョは、2019-20シーズンにはバイエルン・ミュンヘンに貸し出されることになりました。ブンデスリーガ22試合8ゴール6アシストは悪い数字ではありませんが、最後のプレミアリーグで残した14試合7ゴール6アシスト、公式戦20試合12ゴール8アシストと比べると見劣りします。いや、数字よりも内容か。バイエルンのカール・ハインツ・ルンメニゲ会長は、「何試合かはよかったが、その他の試合では抑えられてしまった」と、好不調の波を買い取らなかった理由のひとつとして挙げています。あるいは、内容よりも金額か。フィリペ・コウチーニョに、バルサが払った1億4200万ポンド（約189億円）ほどの価値はなく、バイエルンが許容できる額は半分にも満たなかったのかもしれません。

冒頭の見出しは、ロンドンの「イブニング・スタンダード」が配信した最新記事ですが、「エクスプレス」「ミラー」「デイリー・メール」などが1歩踏み込んで「チェルシーがコウチーニョの代理人であるキア・ジョラブシアン氏と、水面下で交渉を進めている」とレポート。マンチェスター・ユナイテッドがジェイドン・サンチョ獲得に動き、アーセナルやトッテナムに7000万ポンド（約93億円）を払える余裕はないとなれば、ブルーズが得意の速攻を決める可能性が高まります。

バルセロナのトップターゲットは、ネイマールかインテルのラウタロ・マルティネスといわれており、スアレスとメッシが33歳になるスカッドに若いタレントの補強は待ったなしでしょう。「ミラー」は、スペインの名門は8000万ポンドで売ろうとしていると報じていますが、プレミアリーグのクラブが下げにいけば、元値の半額程度で収まるのではないでしょうか。ウィリアンが契約延長せず、ペドロの去就も不透明なチームなら、プリシッチを押しのけてレギュラーポジションを獲得できるのではないかと思われます。

「ミラー」によると、コウチーニョは友人に対して「リヴァプールを離れたのは大きな間違いだった」とこぼし、アンフィールドに戻ってフィルミーノやアリソンとともに戦う未来を夢見ていたそうです。マネ、ワイナルドゥム、ナビ・ケイタ、オリギ、ミルナーによって、既にコウチーニョの穴は埋められており、7000万ポンドで28歳を復帰させるよりも、5300万ポンドでティモ・ヴェルナーを獲得するほうが効果的な補強になるでしょう。

「Stay here and they will end up building a statue in your honour.Go somewhere else, to Barcelona, to Bayern Munich, to Real Madrid, and you will be just another player. Here you can be something more.（ここに残れば、彼らは君の栄誉を称えて銅像を建てる。どこかほかのクラブ、バルセロナやバイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリードに行けば、ありふれた選手になってしまう。ここでやれることは、まだまだあるだろう）」。2017年の夏に、ユルゲン・クロップがコウチーニョを思い止まらせようとした言葉が、重く響きます。アレクシス・サンチェスのような極度のスランプに陥ったわけではないだけに、なおさら。