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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Brazil2014総括・前篇】ポゼッションから直線志向へ。スペインからドイツに移ったサッカーの主流

ついに決勝戦が終わり、2014FIFAワールドカップブラジル大会が、1ヵ月に渡る熱狂の幕を閉じました。いや、おもしろかった!プレミアリーグ専門ブログでございますといいながら、かなりのめり込んでしまいました。しかし、祭りの後というものは、いつも寂しいものです。興奮と安堵が入り混じった何ともいえない複雑な気分ではありますが、今回のワールドカップがどんな大会だったのか、振り返ってみたいと思います。

既に、チャンピオンズリーグでバルセロナが以前のように勝てなくなるなど、欧州における盟主交代が静かに進んでおりましたが、最大のトピックスは「スペイン、ブラジルの凋落」「バルサ流ポゼッションサッカーにとってかわる直線的なサッカーへの変化」でしょう。2回のユーロと前回の南アフリカ大会を制し、6~7年の間、チャンピオンであり続けたスペインが惨敗したのは、コンディション不良だけが理由ではないと思います。

カシージャス、シャビ、イニエスタ、プジョルなど、一世を風靡して代表とクラブを支え続けてきた選手たちが確実に下り坂に入り、クラブでレギュラーを奪われたり代表を外れたりするなか、バルサ式のパスワーク、すなわちティキタカをベースにしたサッカーに軋みが生じていました。誤解のないように添えますが、「スペインのサッカーはもう通用しない」といっているわけではありません。あのサッカーを完成させるためには、特定の選手の能力と、コンセプトを具現化するための連携力、習熟度が必要。今回のスペインは、それを持っている選手が衰えてしまい、同時にスペインのスタイルに対抗できる別な軸が台頭してきてしまったのです。

現在の欧州チャンピオンは、レアル・マドリード。リーガ・エスパニョーラを制したのはアトレティコ・マドリード。そして、欧州最強と目されるクラブは、以前のバルサとはスタイルが違う、新しいグアルディオラのバイエルン・ミュンヘンです。優勝したドイツが体現したものこそ、世界のサッカーが迎えた潮目そのもの。今回のドイツ代表は、グアルディオラ流というより、「ユップ・ハインケスのバイエルン+クロップのドルトムント」とでもいうような、ハーフライン前後で奪ったボールを直線的にゴール前に運んでいくサッカーです。

リーガ・エスパニョーラのマドリード勢や、プレミアリーグのチェルシーなどは、どこでボールを奪うかなどの差異はあれど、大枠ではドイツ代表の思想に近いサッカーを展開しているように思います。ポゼッションという「積み上げのプロセス」よりも、1回1回の攻撃でいかに早くゴールにたどり着くかという「瞬発力の繰り返し」。スペインのグループリーグ敗退とドイツの優勝は、そんな変化のシンボルだったのではないでしょうか。プレミアリーグとセリエAという、近年チャンピオンズリーグで不振のリーグを持つイングランドとイタリアのサッカーには、新しいエッセンスが欠けており、グループリーグ敗退もやむなしでした。

また、今回の大会は、「ゴールゲッターとGKの大会」でもありました。ファン・ペルシ&ロッベン、メッシ、ハメス・ロドリゲス、ベンゼマ。個人力で最終ラインを崩し、ゴールする力があるストライカーもしくは攻撃的MFのいるチームが、軒並み上位進出を果たしました。ドイツはトマス・ミュラー、トニ・クロース、クローゼ、シュールレらの合作でしたが、2列目に自らゴールを奪える選手が並んでいるのが彼らの強さです。個人打開力があるストライカー、ゴールを量産できるトップ下、中に斬り込んでシュートを狙えるサイドアタッカーが揃っているというのが、世界で勝てるチームの新しい勝利の方程式でしょう。

ブラジルが勝てなかったのは、ストライカーの不在とセンターMFの連携力不足。惨敗したドイツ戦では、フェルナンジーニョ、ルイス・グスタフォといったプレミアリーグやブンデスリーガのトップクラブで活躍していたはずのMF陣が、DFの前のスペースをケアできずに相手を自由にさせてしまいました。

それにしても、GKの活躍は凄かったですね。ケイラー・ナバス(コスタリカ)3回、ギジェルモ・オチョア(メキシコ)2回、ティム・ハワード(米国)2回。ブッフォン、エクアドルのドミンゲス、ジュリオ・セーザル、アルジェリアのエンボリ、セルヒオ・ロメロ。今大会は、GKのマン・オブ・ザ・マッチが12回も出る「守護神の大会」となりました。本ブログの読者のみなさんには、「ハワードが大会最優秀GKで決まりでしょう」と拙速に書いたことをお詫びしないといけません。

最優秀GKは、文句なしでノイアーです。いや、GKという言葉も外して、「ノイアーの大会」と言い切ってしまっても構わないぐらいです。ワールドカップを獲得した世界一のGKが、1度もマン・オブ・ザ・マッチを獲らなかったのも日替わりヒーロー軍団・ドイツの強さゆえですが、守備範囲の広さ、シュートを打たれるぎりぎりまで体のバランスが崩れない体幹の強さと強靭な意志は、史上最高のGKといっても大げさではないと思います。われわれは、一生に一度しか出会えないかもしれない素晴らしいものを目撃したわけです。

長くなりそうですので、「【Brazil2014総括・後篇】センター5人体制と、新時代のストライカー&背番号10が大会を席巻!」に続きます。

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“【Brazil2014総括・前篇】ポゼッションから直線志向へ。スペインからドイツに移ったサッカーの主流” への4件のフィードバック

  1. 爪楊枝 より:

    ノイアーはすごかったですね!
    もはや手の使えるスイーパー状態です。
    ここの記事にも出ていましたが、メッシよりもパスが多かったそうです。
    http://qoly.jp/2014/07/14/manuel-neuer-record-more-than-pass-messi-world-cup-7-games
    2011シーズンCLの決勝でチェフと世界最高のPK戦をしてからもう2年。
    もうGKの枠に収まらない選手になったなぁと感嘆しています。

  2. makoto より:

    爪楊枝さん>
    すごかったです。ペナルティエリア外への飛び出しも素晴らしいのですが、至近距離からのシュートにバランスを崩さず、信じられないセーブをするのがまたすごい。フランス戦終了間際のベンゼマの左足、あれは普通入ります。

  3. あああ より:

    ノイアーと言えばシャルケにいた頃、CLでユナイテッド戦った時を思い出します。
    ユナイテッドの圧勝だったけど、あの時のノイアーは本当にフォースの力を使ってるのかと思いました。
    カーンと比べても恥ずかしくないような選手ですね

  4. makoto より:

    あああさん>
    カーンもハートのあるいいGKでしたが、総合力はノイアーが上でしょう。

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