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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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称賛あふれる4強イングランド。リアリティを重視したガレス・サウスゲートと西野朗の共通項。

ケンジントン・パレスのTwitterから、ウィリアム王子がメッセージを発信しました。「I know how disappointed england must feel right now but I couldn’t be more proud of this team and you should hold your heads high. You’ve had an incredible WorldCup, made history, and gave us fans something to believe in. We know there is more to come from this england team. W」(イングランドの人々の失望はまさに今、感じているところですが、このチームを誇りに思っており、頭を高く上げてほしいと思います。歴史に残る素晴らしいワールドカップでした。ファンの信頼を築いてくれました。イングランドチームはさらによくなると確信しています)。

…この言葉に、大きくうなずかされました。プレミアリーグのトレンドとなったハイプレスと速攻をベースに、堅い守備と質の高いセットプレーという武器を磨いたガレス・サウスゲート監督のチームは、予想を上回るベスト4という結果を残しました。「Set-piece specialists」と自軍を形容した「BBC」は、リアルな表現で指揮官と選手たちを称えています。こちらのメッセージも、原文を添えて紹介したいと思います。

「Most observers regarded a quarter-final as a respectable outcome in Russia, so to reach the last four is to be lauded.」「There can be no disguising that the draw offered England an opportunity to reach a World Cup final that they just didn’t have the power to take – the future, however, is bright and full of hope.」(多くの評論家たちが、ロシアではベスト8が妥当な成果だと見做していた。最後の4つに残ったのは称賛されるべきだ。ドローがイングランドにファイナル進出のチャンスをもたらしたとはいえない。そこまでのパワーはなかった。しかしながら、未来は明るく希望に満ちている)

プレミアリーグに関するコメントでは辛口がウリのガリー・ネヴィル氏もまた、ロシアでの母国をリスペクトしていました。「2年前のアイスランド戦から、間違いなく進化した。チームは、いい瞬間、いいプレッシャーを味わえた。ガレスは素晴らしかった。今はとても失望しているかもしれないけど」。そしてもうひとり、プレミアリーグで最も口が悪い指揮官も、愛に満ちた言葉を届けています。「イングランドには泣く理由がある。ファイナル進出に近づいていたのだから。それでも、楽観視できるだろう。チームは過去に比べると、大きく改善した。若いチームだから、次のワールドカップでは、多くの選手たちがより経験を積んでプレイできる」。胸を張って帰国してほしいと語ったジョゼ・モウリーニョは、サウスゲート監督とホランドコーチは続投させるべきと主張しています。

3-5-2という今回のチームの骨格を3月に固めたサウスゲート監督と、同じ時期にチームを預かった西野監督は、レベルの違いこそあれ、その成功と限界に共通項があるように思います。時間がなかったために、実績のある選手を中心に据えたこと。選手たちに、クラブレベルで経験のあるポジションと役割しか任せなかったこと。セットプレーを大事にしたこと。左にまわったマグワイアと、SBからコンバートしたカイル・ウォーカーには、マン・シティとハル・シティで「攻め上がる3バック」の経験があり、WBにクロスやプレースキックが正確なトリッピアーとアシュリー・ヤングを据えたのも若き指揮官の工夫でした。香川、乾など、プレッシングとゾーンディフェンスに心得のあるMFを2列めに据え、勝負どころで本田圭佑というセットピースのスペシャリストを投入した日本人監督と、オーバーラップするポイントがいくつかあります。

選手たちの持ち味を活かした武器を身につける一方で、彼らの限界もまた、共通していました。オプションが乏しかったこと。選手交代によって押し引きをコントロールできなかったこと。短い時間で実現したのは、11人による戦い方の構築に留まり、サブの選手を効果的に動かす術はありませんでした。西野監督の手元には本田圭佑という切り札しかなく、サウスゲート監督のチームで見どころがあったのは、パナマ戦でデル・アリの代わりとして抜擢されたロフタス=チークのみでした。ベストメンバーのポテンシャルを十全に引き出し、モチベーションを上げて戦えれば前評判のひとつ上まではいけるのかもしれませんが、さらに高いところをめざせるチームではなかったのだと思われます。

もし、サウスゲート監督がベルギーを率いていたら…。デブライネのセントラルMF、SBシャドリ、サイドにフェライニなど、疑問符の付く配置が多かったロベルト・マルティネス監督は、輝けるタレントたちをベンチに置かないパズルのような布陣で戦っており、個人力では優勝候補筆頭のベルギーは、戦力の割には粗さが目立つチームでした。サウスゲート流なら、アルデルヴァイレルト、コンパニ、フェルトンゲンの3バック、ムニエとカラスコのWBに、ヴィツェルがアンカーで両脇にデブライネとフェライニ、ルカクとアザールの2トップ。プレミアリーグアシスト王のデブライネという非の打ちどころのないキッカーが、コンパニ、ルカク、フェライニ、アルデルヴァイレルトといったストロングヘッダーに合わせるセットピースは、より強力な武器になったかもしれません。

妄想は、このぐらいにしておきましょう。ベルギーとイングランドの3位決定戦が終わった後、万感の思いを込めて選手たちを称えたいと思います。素晴らしいワールドカップをありがとう!イングランドも、ベルギーも、そして日本も。

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“称賛あふれる4強イングランド。リアリティを重視したガレス・サウスゲートと西野朗の共通項。” への3件のフィードバック

  1. サンドバック より:

    妄想サウスゲイト流ベルギーの布陣、夢が膨らみますね。
    誰もがフランスの戦術を褒めながらも、ベルギーはもう少しやれたはずだと思ってるので、こういうifを論じたのを聞くのも、とても楽しいです。

    —–
    デレアリは不調。その穴を埋めるはずのバークレー、チェンバレンは負傷。
    大事な所で決定力に欠けたスターリング、ケインのバックアップは若干20才が唯一人。

    総じて言うと「駒不足」な印象のイングランドでした。

    私が特に思うのは、ソツ無く無難なプレーで批判もされないしMOMにもなれないヘンダー普通ソンの代わりに、全盛期のキャリックのような支配者が居たならば決勝戦も見れたかなと言う尿道に詰まった結石のような悲しみです。サウスゲートに対する批判は、ミジンコも湧かないですね。

  2. セレマツ より:

    攻撃の形は作れていたので、セットプレーだけと言われるとアホかなって思いますね。
    ヘンダーソンとケインが素晴らしいラストパスを供給しても、GKとの一体一を外しまくったスターリングとリンガードが1番アホですが。
    あとイングランドで面白いなと感じたのは、ヤングがサイドでボールを持った時、逆サイドのトリッピアは中に絞らずライン上まで外に張っていました。ピッチを広く使っていて色々な攻撃が出来ていたと思います。

  3. 匿名 より:

    今大会サウスゲイト一番のミスはヘンダーソンの管理でしょうね。怪我でパフォーマンスが落ちたのはイングランドには大きかった。

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