2026.07.06 FIFAワールドカップ2026北中米大会FIFAワールドカップ
主力の離脱、厳しい日程…逆境のワールドカップ、ブラジル戦で引くしかなかった日本代表の着地点。
ラウンド16で戦ったブラジルは、南米予選で5位のチームで、カルロ・アンチェロッティが就任してからは9勝3分3敗でした。本大会が始まる前に勝った相手は、予選のパラグアイ、チリと、フレンドリーマッチの韓国、セネガル、クロアチア、パナマ、エジプト。唯一の強豪国との対戦だったフランスには2-1で敗れており、昨年11月の日本戦は0-2から逆転負けを喫しています。
グループステージは、モロッコに1-1の後、ハイチとスコットランドに3-0で連勝。中南米のアウトサイダーはリスペクトしすぎで、28年ぶりだった欧州のチームはビルドアップからミス連発で自滅してしまいました。ヴィニシウスさえ抑えられれば、勝機は充分と見ていたのですが…。あらためて振り返ると、2026年のワールドカップは、日本にとって初めて体験する逆境でした。
南野拓実、三笘薫、遠藤航が欠場となり、久保建英はオランダ戦でリタイア。中盤センターでの起用を視野に入れていた板倉滉の負傷も激痛です。守田英正が戦術的に合わなかったとしても、CLの経験値はチームに必要ではないかと思っていたのですが、田中、鎌田、佐野で負けたのなら「たら・れば」は呑み込むしかありません。
主力がごっそり抜けたチームは、スケジュールも最悪でした。チュニジアとスウェーデンが逆だったら、首位通過の可能性は高まったでしょう。欧州予選のグループBでコソボにも勝てず、2分4敗で最下位だったスウェーデンは、ネーションズリーグのランキングの恩恵でプレーオフに進んだチームです。5-1で惨敗のオランダ戦は、脆弱な守備という課題が露呈した一戦でした。
ところが3戦めのスウェーデンは、グループステージ突破を賭けた獰猛なチームになっていました。森保監督は、圧勝での首位通過よりコンディションのほうが重要と判断したのでしょう。谷口、渡辺、冨安、伊東、佐野を先発から外したのは賢明だったのですが、板倉を失ってしまいました。グループFの2位通過は罰ゲームだったようで、ブラジル戦はなぜか中3日でした。
3位のスウェーデンは中4日。他のグループを見ると、カーボヴェルデは6日で、オーストラリアは7日です。日本代表のスカッドは、相当痛んでいたのでしょう。ブラジル戦で堂安と伊東を先発で起用したのは、「何とかリードして守り切るのが最善のプラン」というジャッジだったのではないでしょうか。森保監督の策は妥当でした。カウンターで追加点を決める寸前に迫るまでは。
勝負のターニングポイントは、2分の攻防でした。カゼミーロのダイビングヘッドを、ゴールライン上の冨安がブロックしたのは54分。クリアしたボールが鎌田大地に渡り、ドリブルで始まったカウンターは5対3でした。右からスプリントした伊東のサイドチェンジは的確で、ボックス左で中村がキープ。わざと遅れてボックスに入った鎌田はフリーで、手を挙げていたのですが…!
無謀だったクロスはダニーロの頭に当たるも、レフェリーの指示はゴールキック。この1分後にガブリエウのクロスから、カゼミーロに同点のヘッダーを許してしまいました。CBが蹴った瞬間、佐野が頭を下げなかったらクリアできたのではないか。ボールが上がった瞬間、ブルーノ・ギマランイスとカゼミーロを同時に見なければならなくなった伊藤が外をケアしていたら…!
絶好のチャンスを活かせず、瞬間的な綻びを見せた日本が追いつかれたとき、2つの試合が脳裏をよぎりました。2024-25シーズンのFAカップ決勝、クリスタル・パレスVSマンチェスター・シティと、5月のパリ・サンジェルマンVSアーセナル。これらの試合は同じ展開で、先制したチャレンジャーがリードを守るためにベタ引きしたゲームです。
ディーン・ヘンダーソンがPKを止めてエゼのゴールを守り切ったイーグルスは、ポゼッション22%でシュートは7対23。モスケラがクヴァルツヘリアを倒してしまい、PKで追いつかれたアーセナルは25%で、シュートは7対21でした。ブラジルに逆転された日本は31%で、シュートは5対19。守備に徹した3つのチームは、いずれもビッグチャンスゼロでタイムアップを迎えています。
勝ったクリスタル・パレスは欧州へのチケットを得て、昨シーズンのカンファレンスリーグを制覇し、2026-27シーズンはヨーロッパリーグに出場することになりました。PK戦で敗れたアーセナルは、欧州No.1の堅守を称えられたのですが、やがて記憶から消されるでしょう。5年前のCLの準優勝チームを即答できるのは、サポーターだけです。そして日本代表は…。
最後の失点の情景は、今でも鮮明に像を結びます。田中碧がロストしてからの数秒は、あのエリアで奪い返されることの怖さを物語る時間でした。佐野はブルーノ・ギマランイスから目を離しており、パスが出たとき、シュートコースを消そうとした冨安の指示は菅原には届かなかったようです。外にいたヴィニシウスをチラ見したSBは、マルティネッリに対応できませんでした。
ブラジルに勝っていたら、史上初のベスト8進出を果たし、カーボヴェルデより世界の称賛を集めていたかもしれません。しかし、あの戦い方で敗れれば、どんな評価になるかは容易に想像できます。ムバッペのPKで敗れたパラクアイは、ポゼッション24%でシュートは5対15。ティエリ・アンリは「フットボールが勝った。パラグアイのことは話したくない」と吐き捨てています。
「主力の大量離脱というアクシデントに耐え、王国を苦しめた」と称えるべきか。「カウンターという希望まで放棄する消極的な策で、アンチェロッティのベタな放り込みに屈した」とため息をつくのか。逆境のワールドカップで疲弊したチームには、あれしかなかったのでしょう。クリスタル・パレスは勝った。アーセナルと日本は敗れた。記憶に残るのは勝者だけです。
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