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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

欧州王者に惨敗したアーセナル。2失点とノーゴールの原因を探る。

サポーターたちがフランク・ランパードに抱いていたロマンを数カ月で消し去ったトーマス・トゥヘルは、ノースロンドンに詰めかけたグーナーにも「フットボールというスポーツは、戦術によって大きく変わる」ということを教えてくれました。あまりにも衝撃的だったビッグロンドンダービー。欧州王者とプレミアリーグ8位との差は、1年も経たないうちに、これほどまでに開いてしまったのかと驚かされました。

アーセナルは、なぜ打ちのめされたのか。あらためて、失点シーンを振り返ってみましょう。最終ラインとセントラルMFでボールをまわしていたチェルシーがスピードアップしたのは、左のリュディガーがコヴァチッチに短いパスを出した瞬間でした。高速の縦パスをルカクが収めたとき、ジャカのポジションが中途半端で、リース・ジェームズとメイソン・マウントをダブルでケアさせられていたティアニーは、ゴールに近いMFに着かざるをえなくなりました。

リターンがコヴァチッチに届いたタイミングで、ジョルジーニョから離れて戻ったスミス・ロウが寄せていれば違う展開になったかもしれません。しかし、21歳のプレーメイカーは足を止めてしまい、サンビ・ロコンガは中央のスペースを埋めにいき、誰もいないエリアに立っていたジャカは楽観的なウォッチャーでした。

3対6で対応していたホームチームは、右に出たパス1発で中盤の3人が無力となり、ルカクを追ったパブロ・マリは転倒してしまいました。リース・ジェームズはフリー、ルカクもフリー、ティアニーはマウントが気になり、ホールディングは間に合わず。引き算から導き出される結末はひとつです。

35分の2点めは、左サイドに追い込んだカイ・ハヴェルツに縦パスを出されてしまったのが「敗因」でした。マルコス・アロンソがキープしたとき、ジャカは右サイドに寄ってきており、またもやティアニーはメイソン・マウントとリース・ジェームズのチェックを強いられました。

ルカクがつぶれ、メイソン・マウントがキープすると、左SBのポジションが曖昧になり、空いていたリース・ジェームズにラストパス。狙いすましたインステップに、レノはなす術がありませんでした。ルカクにパスが出ると、近くでフォローしようと中に絞るマウントをSBがチェックするという状況は、あまりにも厳しかったといわざるをえません。

スミス・ロウにジョルジーニョをケアさせたアルテタ監督は、コヴァチッチに動きまわられる展開に対する策を持っていなかったようです。72分までプレイした8番は、69本のパスのうち65本を成功させています。チェルシーの2センターが62本を敵陣で通しているのに対して、アーセナルの2列めは3人足しても55本。攻撃の厚みの違いは明らかでした。

パブロ・マリがルカクに振り回され、中盤をコヴァチッチのパスワークに翻弄され続けたガナーズは、攻撃の戦術も完全に空回りしていました。驚愕のスタッツは、マルティネッリのパス本数。79分までプレイした20歳のアタッカーは、味方に届いたパスが2本しかありませんでした。

アルテタ監督は、まったく機能していなかった選手をなぜあそこまで引っ張ったのか。後半に入ってから上がれなくなったティアニーがリタイアすると、スミス・ロウとニコラ・ペペのドリブルと精度の低い縦1本以外に打ち手がなくなってしまいました。

アーセナルのベンチにいた9人のうち、5人は放出候補として名前が挙がっていた選手です。「戦術を浸透させれば活きる」選手を、「うまくいかないから見切る」としてきた指揮官は、何人獲れば納得するのでしょうか。売れなかったから残留となった選手が多ければ多いほど、チームとしての一体感やモチベーションを高めるのが難しくなります。交代でピッチに入った選手が機能しないのは、ミッションが曖昧だからという理由だけではなさそうです。

ガブリエウ、トーマス・パーティー、ラカゼット、ベン・ホワイトを起用できなかったのは事実ですが、「8~9人が負傷しており限界があった」という指揮官の説明をそのまま受け入れるわけにはいかないでしょう。ポチェッティーノも、モウリーニョも、ランパードも、そしてウナイ・エメリも、選手たちの心が離れたと報じられた直後に解任の憂き目に遭いました。

「フットボールというスポーツは、戦術によって大きく変わる」ことを見せつけられた今、前線も中盤も最終ラインもいいところがなかったチームは、このままの体制で戦い続けるのでしょうか。この夏、プレミアリーグNo.1の投資額を記録しているクラブは、3年連続8位などという結果で終わるわけにはいかないはずです。


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