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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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デクラン・ライスとカイ・ハヴェルツ。明暗分かれる2人のMFのパフォーマンスを振り返る。

決して美しいゴールではありませんでした。「幸運なゴール」という表現がぴったりです。トラップは顎、ボールが落ちた位置は蹴りにくい斜め後ろ。強引に右足を振り抜いたとき、おそらく狙いはなく、「何かが起これ!」と念じただけだったはずです。ところが、ジョニー・エヴァンスに当たったボールは、「ここしかない」左隅に飛んで、オナナのグローブを弾きました

タイムアップの瞬間、膝に手を当て、苦しそうな表情を浮かべたデクラン・ライスに、エミレーツはヴァニラ・アイスの「Ice Ice Baby」…いや、「Rice Rice Baby」の大合唱。情熱的なグーナーが待ち望んだ移籍後初ゴールは、宿敵を相手に残り2分という土壇場で決まったドラマティックな1発でした。

「デクラン・ライスの個性の力がアーセナルをマンチェスター・ユナイテッド撃破に導いた」(「テレグラフ」ジェイソン・バート記者)
「アーセナルがタイトルを争うために必要な ゲームを変えるミッドフィールダー」(「BBC」フィル・マクナルティ記者)
「落ち着き、個性、決して偶然ではない…アーセナルがライスに1億500万ポンドを支払った理由」(「アスレティック」エイミー・ローレンス記者)

現地メディアは一斉に、24歳のセントラルMFの精神力と冷静さ、個性の強さを称えています。決勝ゴールは彼のミッションではありませんが、1億500万ポンドという数字がもたらすプレッシャーを払拭する最高の成果といえるでしょう。

これまでのゲームにおけるボールタッチの位置に、彼の素晴らしさの一端が表現されています。自陣バイタルエリアから敵陣のペナルティエリアの手前まで、上下左右満遍なくあらゆるエリアでボールに触っており、まさにボックス・トゥ・ボックス。マンチェスター・ユナイテッド戦で記録したアタッキングサードへのパス13本は、アーセナル入団以来最多です。

デクラン・ライスは、ゴールというわかりやすい形で自らの価値を示しましたが、カイ・ハヴェルツはまたしてもメディアの議論のネタを提供してしまいました。

41番のインターセプトから始まった13分の速攻で、相手のクリアミスが足元に転がってくる絶好のチャンスを得るも、左足のフィニッシュはフレッシュエアショット、すなわち空振り。27分の失点は、エリクセンにインターセプトされた彼の横パスがきっかけでした。59分のドリブル突破でPKをもらったかと思いきや、VARが映し出したワン=ビサカの足はノータッチでした。

「ハヴェルツのフレッシュエアショットは不信感を募らせた。テクニシャンがこんな初歩的な状況でこするのは、リードバイオリニストが弓を落とすようなものだ。厳しい視線にさらされる彼の葛藤と困惑を痛感する。ひとつ確かなのは、アルテタは批判する気などさらさらなく、自分のグルーヴを見つけるまで選手に手を貸すつもりということだ」(エイミー・ローレンス記者)

守備においては、ブルーノやカゼミーロのプレイを限定する役割を果たしたものの、それだけでは期待に応えたとはいえません。アタッキングサードへのパス2本という数字は、マルティネッリとの連携不足を物語っています。開幕からの4試合でシュート6本、オンターゲットはゼロ。ライバルのファビオ・ヴィエイラは、2試合47分の出場で2アシストと枠内1本を記録しています。

アルテタ監督が、当面はファビオ・ヴィエイラを優先というジャッジをしても、誰も批判しないでしょう。プレミアリーグ制覇をめざす指揮官は、「勝ち続けながらフィットさせる」という難しいマネジメントをどこまで続けられるでしょうか。次節のエヴァートン戦はアウェイ。6節は絶対に落としたくないノースロンドンダービーです。

プレミアリーグでは、しばらくの間はゲームチェンジャーにまわってもらい、カラバオカップやCLで攻撃に集中できるポジションをまかせるという手もあります。今の彼に必要なのは、自信でしょう。アルテタの左インサイドは、そもそも難易度が高い役割です。いずれ手応えが感じられるゲームを体験すれば、強みを発揮できるようになるのではないでしょうか。

デクラン・ライスとカイ・ハヴェルツ。高額の移籍金が話題になったMFは、明暗分かれるスタートとなりました。しかしまだ、開幕から4試合を消化しただけ。あのティエリ・アンリも、初年度のプレミアリーグ初ゴールは8試合めでした。年が明ける頃には、アルテタ監督とエドゥSDが彼らを獲得した理由は、より鮮明になっているものと期待しましょう。


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“デクラン・ライスとカイ・ハヴェルツ。明暗分かれる2人のMFのパフォーマンスを振り返る。” への1件のコメント

  1. グーナーです より:

    ハヴァーツは「アルテタの言うことを守ろうとしているが空回り」で、
    ライスは「ときどき自分勝手に判断するがうまくいっている」という印象です。
    アルテタ戦術に頭と体がピタッと一致すれば、ハヴァーツが大化けする日もあると期待しています。
    一方でライスは下がり過ぎな点もあったり、サッカーIQが高く気が利くからこそ好き勝手なところもあるのかなと思います。
    どちらが最終的にアーセナルにフィットするのかは、もう少し時間をかけて見守りたいです。

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