偏愛的プレミアリーグ見聞録

「The Premier League’s age of attacking football is here（プレミアリーグに攻撃的フットボールの時代が到来）」。ちょっぴり古くさいテイストのキャッチコピーですが、「アスレティック」のニック・ミラー記者のハイテンションには、こちらも乗せられてしまいます。

プレミアリーグ4節の10試合で、ノーゴールはチェルシーとヴィラのみ。スタンフォード・ブリッジ以外の9試合は、両チーム合わせて3ゴール以上を記録する攻撃的なゲームでした。

アーリング・ハーランド、エヴァン・ファーガソン、ソン・フンミン。1日に3つのハットトリックを記録したのは、1995年9月23日のロビー・ファウラー、アラン・シアラー、イエボア以来28年ぶりで、プレミアリーグ史上2回めです。ブライトンの4戦12発が目を引きますが、これまでで最大のサプライズは、11ゴールをゲットしたトッテナムの快進撃ではないでしょうか。

アントニオ・コンテが退任してからのスパーズは、悪い話ばかりが続きました。ステリーニ体制で臨んだニューカッスル戦で、21分間に5ゴールを喰らって6-1の惨敗。後を継いだライアン・メイソンもパッとせず、2人の暫定監督が率いたラスト8試合は2勝1分5敗で、ヨーロッパカンファレンスリーグの出場権すら取り逃してしまいました。

新監督の招聘は難航し、ユリアン・ナーゲルスマンとアルネ・スロットはNG。セルティックを率いていたポステコグルー監督は、直前まで3番手以内に入っていないアウトサイダーでした。何とか指揮官を決めたものの、ロリスは退団希望で、ペリシッチも母国復帰が囁かれていました。中盤を仕切っていたベンタンクールは、前十字靭帯損傷の重傷で10月まで戻ってきません。

6月の唯一の希望は、ジェームズ・マディソンの獲得でした。昨年来の人気銘柄ですが、リヴァプールはマック・アリスターとショボスライ、アーセナルがカイ・ハヴェルツ、チェルシーはカイセド待ちで、マンチェスター・ユナイテッドはメイソン・マウントに走ったため、チャンスが巡ってきました。このご時世に4000万ポンドは、降格クラブならではのお買い得価格です。

GKヴィカーリオも押さえ、補強が進むかと思いきや、7月は沈黙。8月になると、昨季プレミアリーグで30ゴールの絶対的エース、ハリー・ケインがバイエルンに移籍してしまいました。懸案の最終ラインの即戦力獲得は、ミッキー・ファン・デ・フェンのみ。ブレントフォードに2-2で引き分けた開幕戦には、昨季プレミアリーグで1度もなかった3連勝の予兆はありませんでした。

2節のマンチェスター・ユナイテッド戦で目を疑ったのは、イヴ・ビスマとパペ・マタル・サールの2センターです。ホイビュルクはコンディションが整わなかったから、開幕戦はベンチだったのだろうと思っていたのですが、どうやら若手のバックアッパーとなったようです。後半開始からの怒涛のアタックで先制し、2-0完勝。続くボーンマス戦も、0-2で勝ち切っています。

ヴァイタリティスタジアムの一戦で先制ゴールを決めたのは、ジェームズ・マディソン。マンチェスター・ユナイテッド戦でも攻撃を仕切っていたプレーメイカーは、カイ・ハヴェルツやメイソン・マウント、マック・アリスターが真価を発揮できないなかで、4戦2発2アシストという数字を残して快進撃の立役者となっています。

2勝1分けで迎えた4節のバーンリー戦は、ソン・フンミン無双で2-5圧勝。1試合あたりのシュート数18.3本、オンターゲット7.3本、ドリブル成功14.5回は、いずれもリーグ2位です。4試合でシュート4本とリシャルリソンが絶不調でも、ゴールを量産できるのは、新たな2センターとプレーメイカーに加えて、マノー・ソロモンやウドジェといった新戦力が機能しているからです。

インターナショナルブレイクが明けると、ノッティンガム・フォレストから獲得したブレナン・ジョンソンが前線に加わります。22歳のアタッカーは、ソン・フンミンやクルゼフスキとともに仕掛ける速攻の精度を高めてくれるでしょう。欧州がないとはいえ、選手層の薄さが気になりますが、スパーズはどこまで快進撃を続けられるでしょうか。6節のノースロンドンダービーが今から楽しみです。