イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「環境に適応するのはフットボーラーの仕事の一部」世界のトップレベルと戦う冨安健洋の現在地。

7月上旬に、アーセナルのトレーニングに復帰した冨安健洋を見たとき、「精悍になった」という印象を受けました。3月に右膝を痛めてシーズンアウトとなり、「プレミアリーグの開幕に間に合わない可能性がある」と報じられていたのですが、アルテタ監督から声がかかれば、すぐにでも戦える準備ができているのは明らかでした。

ふくらはぎを痛めた初年度も、膝をやってしまった2年めも、プレミアリーグ出場は21試合。しかしその中身は、大きく異なります。指揮官に絶大な信頼を受けていた最初のシーズンは、右サイドのレギュラーとして19試合に先発。ウィリアム・サリバの降臨でベン・ホワイトとポジションを争った昨季は、スタメンは6試合に激減しました。

定位置奪還をめざす日本代表にとって、不穏なニュースが届いたのは7月14日でした。アヤックスのユリエン・ティンバーが入団決定。サリバとガブリエウのコンビがアンタッチャブルだとすると、ティンバー、ベン・ホワイト、トーマス、ジンチェンコ、ティアニー、キヴィオル、冨安で左右をカバーすることになります。移籍ゴシップの見出しに「Takehiro Tomiyasu」の名前が出るようになったのは、この頃からでした。

ノースロンドンに踏み止まるのか、イタリアに復帰するのか。さまざまな噂が流れるなかで、心の底では「アルテタ監督が手離すわけがない」と高をくくっていました。4つのポジションをすべてこなすユーティリティ、先読みの鋭さと的確なポジショニング、サラーをも封じるハードマークは、今のアーセナルに欠かせないエッセンスだと確信していたからです。

新シーズンの最初の出番は、思いのほか早く到来しました。ノッティンガム・フォレストとの開幕戦の50分、ティンバーが前十字靭帯損傷でリタイア。左サイドに入った冨安は、直後にミドルシュートを放ち、85分にはオーバーラップから惜しいクロスをフィードしています。守備は無難にこなしたものの、低いポジショニングが気になった復帰戦でした。

2節のクリスタル・パレス戦は、5カ月ぶりの先発出場。0-1で勝った試合のハイライトは、遅延行為と見做されたスローインとジョルダン・アイェウとの接触でもらった2枚のイエローです。フラム戦のサスペンデッドの後、マンチェスター・ユナイテッド戦では1-1の76分に登場。ジンチェンコの後を受けて失点回避を託された冨安は、78分に彼らしいプレイで役割を果たしました。

サリバのタッチミスをエリクセンにカットされ、左のラシュフォードにボールが渡ってカウンターが発動。アントニーに着いていた冨安は、ニアに走り込んだホイルンドにマークを切り替えながら、外を走る21番も視野に入れています。

ガブリエウがラシュフォードに追いつき、ドリブルが止まると、中央の2人をオフサイドにして任務完了。ラインを気にしてポジションを修正した冨安は、強引なドリブルのこぼれ球をラムズデールが押さえる前に、次の展開に備えて左サイドをチラ見していました。

カウンター対応といえば、一昨日のドイツ戦の45分にレロイ・サネを止めたプレイも圧巻でした。縦パスがサネに出た瞬間、カイ・ハヴェルツを捨てて追いかけた冨安は、元マン・シティのドリブラーが左にまわって打つ瞬間に足を出し、狙い通りにCKに逃れました。彼が戦う世界が、いかにハイレベルであるかを思い出させるぎりぎりのチェックでした。

アーセナルのシャツを纏う彼の姿に慣れて、「今日はもの足りない」などと評するのが当たり前になっていますが、プレミアリーグのトロフィーを狙うレベルのチームで、ベン・ホワイトやサリバとポジションを争うのは、とてつもなく凄いことです。無邪気に試合を楽しむプレミアリーグファンから見えないところで、彼は日々戦い、チームに貢献しようとしています。

「どのチームでも重要なことだけど、まずは他の選手の国籍や文化の違いを尊重しなければならない。相手の性格や個性をつかんだうえで、何を望んでいるのか、自分に何を期待しているのかを知る必要がある。そうすれば、相手をより深く理解することができ、みんなとやっていけるようになれる」

「ヨーロッパ出身の選手と自分とは、明らかに違うと感じる。でもね、イギリスにいるんだから、環境に適応してフィットするのは自分の責任なんだ。僕はサッカーをするためにここに来た。だから適応しなければならない。他の人が適応するんじゃない」

「チームのスケジュールや食事の時間など、こっちでプレイするとなると何かと違うことがあるけど、ベルギーで既に何かに適応するのは慣れていたし、イタリアでもプレイしてきた。日本人は、新しい環境に適応するのが得意だと思う。これもフットボーラーの仕事の一部。イギリスにいて、それほど難しいとは感じていない」(アーセナル公式サイト「Tomiyasu’s dressing room differences」より)

今季もぜひ、プレミアリーグや欧州のトップレベルを完封する極上のパフォーマンスを。そして念願のトロフィーを。ロンドンダービー、マンチェスター・ユナイテッド、ドイツ代表…彼が立つステージの凄さと、当たり前のようなプレイの素晴らしさについて、あらためて思い直した数週間でした。そろそろ、ゴールシーンも見たいですね…!


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