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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ジンチェンコの負傷で注目のティアニーは、アーセナルに復帰させるべきか、売却が妥当か?

Arsenal paying price for summer transfer mistake as Edu eyes Kieran Tierney replacement」。トランスファーマーケットにおけるアーセナルの動向を追いかけている「フットボールロンドン」が、レフトバック問題を取り上げています。事の発端は、ジンチェンコの負傷でした。ハムストリングを痛め、フラム戦を欠場した35番は軽傷といわれているものの、復帰時期は未定です。

レギュラーSBのトラブルを受けて、にわかに注目度が高まったのはキーラン・ティアニーです。複数のメディアが、アーセナルはレアル・ソシエダに貸し出したスコットランド代表を呼び戻す可能性があると報じています。「夏の失敗の代償を支払っている」という冒頭の見出しを掲げたルーク・スローワー記者は、彼の放出は結果論ではなく失敗だったと主張しています。

ティアニーを残すべきだったという論拠は3つです。「レアル・ソシエダへのローン移籍が決まったのは、ティンバーが負傷した2週間後だった」「冨安健洋がアジアカップでいなくなるのはわかっていた」「キヴィオルが信頼できるかどうかは微妙だった」。これに対するアルテタ監督の言い分は、「彼は新たな戦術にフィットしなかったから」でしょう。

今、あらためて勃発している「ティアニーを復帰させるべきか、売却するべきか」という議論について考えるべく、デッドラインデーの直後に配信された「スカイスポーツ」のレポートを紐解いてみましょう。2022-23シーズンのプレミアリーグのスタッツを揃えて、ジンチェンコとティアニーを比較したシュビ・アルン記者は、彼の序列が下がった理由をこう説明しています。

「ティアニーの軌跡は、この1年のアーセナルの戦術的進化を物語っている。アルテタは、初期に採用した守備的な3人のバックラインから離れて、より流動的で前がかりのアプローチを採用した。左SBがオーバーラップしてタッチライン際を猛進し、ボックスにクロスを送り込むようなセットアップは不要になった」

「シームレスに中盤にステップアップし、ビルドアップに貢献するジンチェンコの能力は、システムにとってかけがえのないものだ。彼こそがシステムだという人もいるだろう。ティアニーが現在のセットアップに対して不自然で、フィットしていないように見えたのは、彼の硬直した動きと同様に、パスにも原因があった」

「彼はプレミアリーグでの4シーズンで、パス成功率が77.3%を上回ったことがない。対照的なのがジンチェンコで、6シーズンのパス成功率は86.4%を下回ったことがない。序列が下がったティアニーは、態度や積極性は申し分ない。彼の退団は、戦術的な理由によるものでしかない。アーセナルのアプローチがガッツから狡猾に移行する際に巻き添えを食っただけともいえる」

この見方自体には、多くのグーナーが納得するでしょう。問題は、「ティアニーを不要とするのか、オプションとして機能させるのか」です。オーバメヤンが退団したとき、キャプテンの最有力候補とまでいわれたSBを復帰させてほしいという声が聞こえてくるのは、「偽SBが機能しないとき、彼のクロスはチームを救う武器になりえる」と考える人が多いからではないでしょうか。

マルティネッリが左サイドで囲まれ、中に入れなくなったとき、ティアニーが外から仕掛ければ、マークが分散する可能性が高まります。あるいは、彼が出場する際は右サイドを偽SBにするという手もあるでしょう。ベン・ホワイトや冨安健洋、トーマスが中央に入る布陣では、左SBはガブリエウの外をカバーすることになりますが、この形はスコットランド代表で慣れています

ティアニーは不要か?という問いには、「右サイドを偽SBにするというバリエーション」「後半のゲームチェンジャー、プランBのひとつ」「右サイドに強力なウインガーがいるチームに対しては、ジンチェンコよりティアニー」が答えでしょう。彼がいることで、戦い方が広がるのは間違いありません。

となると、真の問題は、アルテタ監督の頑固さとレギュラー偏重の起用なのかもしれません。レアル・ソシエダへの移籍について聞かれたティアニーが「難しい決断だったか? いや、大きな決断だったけど、簡単だった」と返したのは、6試合しか先発がなかった昨季のプレミアリーグを通じて、居場所がないと感じていたからではないかと思われます。

ティアニーのレンタルバックが実現するかどうかはわかりませんが、SBが足りない現状を改善するために、スペインとの交渉を進めるべきでしょう。ただし、これには条件があり、「アルテタ監督が彼を必要とし、存分に活用するなら」です。ご本人がクラブに必要とされていると感じられなければ、レアル・ソシエダに完全移籍という「簡単な決断」をするだけで終わりそうです。

昨季から3人トータルでプレミアリーグの先発が6回しかないネルソン、スミス・ロウ、ファビオ・ヴィエイラにも、同じことがいえます。彼らが必要か、不要かは起用法次第。プレミアリーグとチャンピオンズリーグを本気で勝ちにいくなら、ターンオーバーを敢行してレギュラーとサブとの間の溝を埋めなければなりません。SBも中盤も最注目ポイントは、指揮官の采配です。


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