偏愛的プレミアリーグ見聞録

チェルシー降臨以来、公式戦4連敗のフランク・ランパード監督は、当初報じられたとおり、プレミアリーグ最終節のニューカッスル戦がラストステージとなるようです。「BBC」「テレグラフ」など現地メディアが、ブルーズの次期監督選びは3人に絞られたと伝えています。

ポールポジションと目されているのは、昨年の夏にパリを離れたマウリシオ・ポチェッティーノ。2番手として名前が挙がっているのは、バーンリーをプレミアリーグに復帰させたたヴァンサン・コンパニ監督です。さらにもうひとり、「名前が明かされていない候補」がいると報じられており、チェルシーは10日以内の合意をめざしているようです。

今週の初めは最有力候補だったユリアン・ナーゲルスマンとの交渉は、完全に決裂。「BBC」のアレックス・ハウエル記者は「クラブ内で懐疑的な声が出ていた」と伝え、「テレグラフ」のマット・ロウ記者は「チェルシーが早期の決定を求めたため、プロセスから降りた」とレポートしています。

メディアがターゲットのひとりと伝えていたルイス・エンリケは、早々にもの別れになったとのこと。指揮官選定のプロセスを主導した共同SDのポール・ウィンスタンリーとローレンス・スチュワートは、ヴィジョンが明確なポチェッティーノさんに感銘を受けたそうです。

スパーズで過ごした5年間で数多くの若手を育て上げ、2016-17シーズンのプレミアリーグで2位にジャンプアップ。2018-19シーズンには、クラブ史上初めてチャンピオンズリーグのファイナリストとなっています。パリ・サンジェルマンでは初年度にクープ・ドゥ・フランス、2021-22シーズンにはリーグアンを制覇。長期的な強化を図りたいクラブにとって、うってつけの監督です。

懸念とされていたのは、「元トッテナム」という経歴に対するクラブ内の抵抗感と、復帰を熱望しているといわれていたダニエル・レヴィ会長のアプローチですが、マット・ロウ記者は「現在は両方ともクリアされている」と明言しています。スパーズから具体的な話はなく、ご本人はチェルシーのプロジェクトに前向きだそうです。

一方、ヴァンサン・コンパニ監督のほうは、アンデルレヒトで3年、バーンリーで1年の経験しかなく、ベルギーカップ準優勝が唯一の実績です。それでも彼が魅力的に映るのは、数ヵ月でバーンリーにポゼッションサッカーをインストールし、チャンピオンシップで最もエキサイティングなチームを創り上げたからでしょう。

37歳の若き指揮官は、バーンリーがプレミアリーグで戦える資金を持っていないのを怖れているようで、チェルシーからオファーがあれば承諾すると見られています。ただしこちらは、スパーズの有力候補でもあり、「お金が出すけど、オーナーが介入するクラブ」と「任せてもらえるけど、お金を出し渋るクラブ」の二択を迫られているようです。

現在のチェルシーのスカッドを見ると、より早期にフィットしそうなのは、スパーズで速攻を磨き上げたポチェッティーノさんではないでしょうか。ハリー・ケインやデル・アリをブレイクさせた指揮官にとって、有望な若手が多いのはウェルカムでしょう。熱すぎるオーナーとうまくつき合えれば、アブラモヴィッチ時代に見られなかった長期政権が実現するかもしれません。

極秘にされている3人めの候補（ローマとか？）が気になるところではありますが、プレミアリーグの優勝チームが決まる前に配信される予定なので、しばしゴシップを楽しむこととしましょう。ランパード監督の次なるバトルは、ミッドウィークのブレントフォード戦です。火中の栗を拾った男気あるレジェンドに、鮮やかな初勝利を期待したいと思います。