2026.10.10 監督トピックスマンチェスター・シティの話題
マン・シティをひたすら守ろうとしたエンツォ・マレスカ。注目の試合前会見の一部始終。
この場の主役は、エンツォ・マレスカ。マンチェスター・シティが9億ポンドを超える額の財務規則違反を有罪と宣告されてから、オフィシャルな会見をするのは初めてでした。主役というより、尋問を受ける被告人という表現のほうがぴったりでしょう。穏やかな笑みを湛えた現場のトップは、「落ち着いて話そう」「冷静になろう」と自らに言い聞かせていたのだと思われます。
「あなたはシティを巡る論争を『ノイズ』と表現していました。独立委員会の調査結果に対する多くの人々の怒りを軽視しているのではないでしょうか?」。最初から厳しい質問が飛んでくるのは、予想通りだったはずです。「まずは、おはようございます」と柔らかく返したマレスカ監督は、「みなさんがここにいる理由は理解しています」と続けました。
「私がいえるのは、既に述べられてきたことだけです。現在は調査が進められており、現時点ではクラブを完全に信頼しています。いえることは、それだけです」。なぜクラブを信頼しているのか?説明を求めたのか?彼らが主張する「反論の余地のない証拠」を実際に見たのか?鋭い問いにも冷静に対応していたのですが、言葉は強すぎたかもしれません。
「まずいいたいのは、クラブを信頼しているということ。そこにいるのは、信頼できる人々だからです。それは、このクラブに加わった理由でもあります。世界じゅうを見渡しても、ここにいたいと思えるクラブは他にありません。ここにいられて、とてもハッピーです。就任以来、何度もいってきたように、このクラブをとても誇りに思っています」
以前にもここでペップと仕事をしていたが、当時の成果は違ったものに見えるかという婉曲な質問には、「Absolutely not.(全くそんなことはない)」とひとこと。「前にいたのはトレブルのシーズンで、選手、監督、クラブの努力を知っています。目標を達成するためにクラブがどれほどがんばったか。すべてわかっているので、何の疑いもありません」ときっぱり否定しました。
「われわれがコントロールできるのはフットボールだけ」と強調した指揮官は、「クラブを信頼している」「疑いはない」と繰り返し、「クラブと話したことを伝えられるのは、控訴審で勝訴したときでしょう」といっています。対戦相手の名前が出てこない試合前会見を覚悟していたとはいえ、言質を取られないように返し続けるプレッシャーはきつかったのではないでしょうか。
「ハルドゥーン・アル・ムバラク会長かフェラン・ソリアーノCEOが、今日のような質問に答えるべきでは?」と問われ、「リヴァプール戦の会見であることを忘れないでください」と釘を刺した後、予想外のツッコミが入りました。「先ほど、『現時点では』クラブを完全に信頼しているとおっしゃいました。今後その考えが変わる可能性は?」。確かに、そういってました。
「すみません。間違った答え方でした。今、この瞬間も将来も、そしてこれからもずっとクラブを完全に信頼しています。ありがとうございます。答えを修正することができました」。自分の発言が、ネットメディアに記録として残ると意識していたからこその表現です。「控訴が棄却されたらどうなる?」といわれると、「認められたら、どうなります?」と切り返しています。
張りつめた空気のなかで続いた尋問のトーンが変わったのは、ペップのジョークが話題になったときでした。「ペップはかつて、リーグ1で監督を務めてもいいといっていました。おそらくジョークでしょう。でもシティのファンは、あなたが同じことをいったら喜ぶと思いますよ」。即答したのは、「下部リーグでも監督を続けるのか」という質問を想定していたからでしょうか。
「私はレスターでチャンピオンシップを制覇しました。リーグ1にいくことになったら、そのときはそのときです。そんなふうになるのか、わからないけどね」。余計なことは絶対にいうなと厳命されたサラリーマンのように、広報担当としての仕事を完遂したマレスカ監督は、会見の開始から14分後の質問を聞いて「Finally…(ついに)」と安堵の声を漏らしました。
「アーリング・ハーランドの調子はどうですか?」
その2分後、時計は10時42分。史上最大の注目度と評されたプレスカンファレンスが終わりました。「ここにいたいと思えるクラブは他にない」「最も重要なのは、正しいことを続けること」「独立委員会の調査結果が公表されていたとしても、100%の確率で監督になっていた」。何としてもクラブを守りたいという思いが、痛々しく感じられるほど強い言葉を生んだのでしょう。
質疑応答をすべて確認して、「就任する前に、有罪判決が下される見通しであることと、全面的に戦うことを聞いていたのだな」と思いました。彼もまた、スカイブルーを愛してやまないシティズンだったのです。クラブには、愚行の報いは甘んじて受けるべしと思いつつ、濃密な16分を過ごした男の心意気と覚悟に言葉を失いました。あまりにも愚かな…彼も、きっと私も。
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