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マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

現地記者が解説!補強&売却失敗が多かったマンチェスター・ユナイテッドの負の遺産と改善の兆し。

この夏のトランスファーマーケットにおける大きな話題のひとつは、サウジアラビアの大攻勢です。政府系のパブリック・インヴェストメント・ファンド(PIF)に支えられた4つのクラブが、ヨーロッパじゅうにビッグマネーを投じており、プレミアリーグで最も恩恵を受けているチェルシーは、筋肉質なスカッドに変貌を遂げています。

「マンチェスター・ユナイテッドには、サウジアラビアの資金が流れてこない」と嘆いているのは、地元メディア「マンチェスター・イブニングニュース」のティロン・マーシャル記者。彼が書いた2つのレポートは、選手の価値を評価できなかったエド・ウッドワード時代の「負の遺産」について、わかりやすく解説しています。

Manchester United are struggling to sell players for one clear reason(マンチェスター・ユナイテッドが売却に苦労しているのは明確な理由がある)」と題した記事は、「高すぎる移籍金とサラリー」「ローン移籍の失敗」の事例を挙げています。前者の代表は、レスターから8000万ポンドで引き入れたマグワイアと、3500万ポンドだったファン・デ・ベーク。いずれも、移籍金に見合うパフォーマンスを披露できていない選手です。

移籍金が高騰したタイミングで手を出したため、失敗したら大幅な減額での売却を覚悟しなければならず、高額なサラリーは買い手が引いてしまう理由になります。成長余力がある若手を見極められず、評判がいい選手とベテラン獲得に傾斜したことが、その後の売却を難しくしているというわけです。

ティロン・マーシャル記者によると、過去10年の新戦力のうち買い値より高く売れたのは、ダニエル・ジェームズ、アレックス・バトナー、ダレイ・ブリント、チチャリート、スモーリングのみ。ジョゼ・モウリーニョとスールシャールが育成を得意とする監督ではなかったことも、獲得した選手のプライスダウンにつながってしまった感があります。

アレックス・テレスとエリック・バイリーは、ローン移籍の失敗によって価値を下げてしまった事例です。SBはセヴィージャ、CBはマルセイユにレンタルしたのですが、選んだクラブのレベルが高かったため、充分な出場機会を得られませんでした。前述のレポートは、「バイリーがちゃんと試合に出場していれば、マルセイユは500万ポンドで買い取っただろう」といっています。

「ユナイテッドが証明したのは、彼らがこのレベルでは通用しないということだけである。それぞれのレンタルは、選手の価値を取り戻すどころか、ユナイテッドが期待する移籍金を減少させただけだ」

記者が書いたもう1本の記事のタイトルは、「Manchester United get £75m boost by getting contract situation under control(マンチェスター・ユナイテッドは、契約のコントロールによって7500万ポンドの利益を得た)」。近年の悪しき契約と、ウッドワードが去ってからの改善をまとめた興味深いレポートです。

こちらの前段では、高すぎる獲得費用と気前がよすぎるサラリーが足かせになっていたクラブは、選手の契約延長においてもミスが多かったと指摘しています。悪しき事例は、ダヴィド・デ・ヘアとフィル・ジョーンズ。エド・ウッドワードが仕切った2019年の契約延長は、失敗を予見できるはずだったという評価です。

「ジョーンズは2019年2月に4年契約を手渡されたが、既に負傷がちで、契約後の先発出場はわずか16試合だった。その年の後半、デ・ヘアはひどい出来でシーズンを終えたにも関わらず、世界で最も高額サラリーのGKになった。これらの契約はユナイテッドに損失をもたらした」

ここまで読むと、サポーターとしては暗い気持ちになりますが、リチャード・アーノルドがCEOに就任してからは、体質改善が進んでいるようです。近年放出したマティッチ、マタ、リンガード、ポグバ、カバーニのなかで、その後活躍した選手はおらず、クリスティアーノ・ロナウドもすんなり退団。フィル・ジョーンズとデ・ヘアのサラリーもなくなりました。

「ブランドン・ウィリアムズ、アレックス・テレス、エリック・バイリー、フレッジは2024年に契約が切れるが、4人ともこの夏に売却される見通し。ワン=ビサカ、リンデロフ、マルシャルは、次の夏に満了となる契約に1年の延長オプションが付いているが、このトリオの誰もが優先すべき契約更新とは見なされないだろう」

マンチェスター・ユナイテッドの直近の決算では、年間7500万ポンド(約136億円)以上の人件費が削減されており、売上高に対するサラリーの比率は50%台に落ちています。サラリーが高騰する要因として顕在化しているのは、何としても引き留めたいマーカス・ラシュフォードのみ。ジョン・マータフFDとテン・ハフ監督が長期的な視点で強化を図れるようになりつつあります。

明快な戦略をもってチーム作りを推進しているマン・シティ、リヴァプール、アーセナルには先にいかれているものの、今後の巻き返しに期待できる体制になりました。メイソン・マウント以外がなかなか決まらず、やきもきする昨今ではありますが、ポジティブな目線でマーケットの動向をウォッチしたいと思います。今後の最大のポイントは「売却がうまくいくか」ですね。


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