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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

早熟の天才は未完のままで。最後まで自分を信じ続けたジャック・ウィルシャーがついに引退。

最も輝いたのは、18歳だった2010-11シーズン。プレミアリーグ35試合1ゴール3アシストという数字を残した原石は、プレシーズンに足首を骨折し、2011-12シーズンは出場ゼロに終わりました。それから10年。負傷との戦いに明け暮れたジャック・ウィルシャーが、ついに引退を発表しました。

16歳256日は、アーセナルの最年少プレミアリーグデビュー記録。イングランド代表を背負って立つ存在と期待された早熟の天才は、ロンドンオリンピックとユーロ2012を欠場した後も、ベストといえるシーズンを過ごせずにいました。2012-13シーズンは膝のケガで出遅れ、2013-14シーズンは亀裂骨折を負って終盤の2ヵ月を失っています。

それでもこの2年は、彼こそがNo.1と叫ぶ熱狂的なグーナーの期待を背負った素晴らしい季節だったといえるでしょう。2012年にガナーズの10番を託され、2014年にはワールドカップブラジル大会に出場。2013-14シーズンのプレミアリーグで挙げた3ゴールと4アシストは、いずれも自身のハイスコアです。

彼の最大の悲劇は、ベストポジションを見つけられずにキャリアを終えたことではないでしょうか。巧みなドリブルと背中の10番に引っ張られ、攻撃的な役割を期待したファンも多かったのですが、プレミアリーグ通算182試合で8ゴール18アシストと、フィニッシュへの関与が少ないプレーヤーでした。イングランド代表では、しばしばアンカー。アーセン・ヴェンゲルは「ボックス・トゥ・ボックス」と評しています。

現在のスターたちと照らし合わせると、ブルーノ・フェルナンデスやメイソン・マウントのようなゴールセンスはなく、ファビーニョやロドリ、カンテほどの守備は期待できず。最も近いのはコヴァチッチ? 狭いスペースを苦にしないドリブルと、意外性のあるパスでエミレーツやバイタリティを沸かせたMFは、未完成のままキャリアの晩年を迎えてしまいました。

2015-16シーズンは腓骨骨折でアウト。2016-17シーズンにボーンマスにレンタルされて復活を遂げると、2017-18シーズンが最後の輝きでした。とはいえ、ヨーロッパリーグではレギュラーだったものの、プレミアリーグで主力と呼べたのは2ヵ月だけです。最後の6試合のうち、5試合をベンチの外で過ごしたレフティは、大好きなアーセナルに別れを告げることになりました。

ウェストハムでの2年は、足首と鼠径部を痛めてプレミアリーグ16試合出場に留まり、最後のクラブとなったデンマークのオーフスGFでは、フル出場は2試合のみでした。現役を続けたかったウィルシャーに届いたのは、古巣アーセナルによるアカデミー指導者のオファーだけだったようです。

「自分ではどうしようもない理由で、キャリアが後退しているのを受け入れるのは難しいけど、まだまだいろんなことができるはずと感じている。最高峰のレベルでプレイし、いつも大きな野心を抱いてきた。正直にいうと、こんな立場になるなんて思ってもみなかった」

「しかし、あらためて見つめ直す時間を持ち、親しい人たちとも話し合って、今が適切な時期であるとわかった。難しい時期だったけど、これまで達成してきたことに大きな誇りを抱きながら、自分のキャリアを振り返ることができた」

2013-14シーズンからのFAカップ連覇では、いずれもベスト8からの出場時間はファイナルの14分のみ。主役としてトロフィーを獲得した大会はついぞなかったけれど、逆境に陥っても自らを信じ、最後まで戦い抜こうとしたプロフェッショナルだったと思います。おつかれさまでした。新しいステージでは、果たせなかった自らの夢を現実にするタレントを育て上げていただければと期待しています。


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