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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

新機軸は天下を取るのか?「リヴァプール2.0」の中心人物、アレクサンダー=アーノルドに思うこと。

あの頃、私は彼に魅了されていました。イングランド代表の右SBは、10年安泰だと思っていました。2019年5月7日、チャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ。敵地でバルサに0-3で敗れたリヴァプールが奇跡的な逆転を果たしたゲームで、ジニ・ワイナルドゥムに通した鋭いグラウンダーと、オリギが空いているのを目ざとく見つけたクイックスタートのCKは、今もなお脳裏に焼き付いています。

2018-19シーズンは、トレント・アレクサンダー=アーノルドがレギュラーとして開幕を迎えた最初のシーズン。4月以降のプレミアリーグとCLで10戦10アシストの荒稼ぎで、DFとしてリーグ史上最多タイとなる12アシストを積み上げました。逆サイドのロバートソンも11アシスト。同一チームの2人のSBが同時に2ケタアシストも、リーグ史上初の快挙です。

20歳にして欧州を制したアーノルドは、2019-20シーズンもハイパフォーマンスを継続。プレミアリーグ全試合出場で、DFのレコードを更新する13アシストを記録しました。リヴァプールの悲願だったプレミアリーグ初制覇の立役者となり、PFA年間最優秀若手選手を受賞。あまりにも素晴らしい高速クロスとプレースキックに幻惑され、守備の多少のミスは気になりませんでした。

レッズサポーターのみなさんに、問うてみたいことがあります。絶頂期の彼の守備は、うまいとはいえなかったものの、ここ数年で語られているほど脆くはなかったと記憶しています。私が熱に浮かされ、弱点が見えなくなっていたのか、彼自身に生じた迷いがレベルダウンを招いてしまったのか…。この後の3年で、早熟の天才に対する思いは複雑になっていきました。

順風満帆だったキャリアに影が差したのは、2020-21シーズンでした。年明けから不振に陥ったチームに引きずられるように、ボールロストの多さが話題になり(24節のレスター戦で45回!)、3月にはイングランド代表から外されてしまいました。2022年になっても、守備の諸さを指摘する声は止まず、ワールドカップカタール大会は33分の出場に留まっています。

翌シーズンにはプレミアリーグ32試合2ゴール12アシストと復調。23歳にして、FIFAクラブワールドカップ、CL、UEFAスーパーカップ、国内三冠をコンプリートした選手は他にいないそうです。しかし2022-23シーズンは、右サイドで抜かれたりポジショニングミスから失点を喫したりするシーンが増え、レッズはついにTOP4から陥落してしまいました。

酷評を重ねられる苦しいシーズンのなかで得た小さな果実は、偽SBという新たな役割でした。ポゼッションを取ると中盤センター、相手にボールが渡るとフルバック。0-2から追いついた4月のアーセナル戦で中央に絞ったアーノルドは、そこから自身2度めの5試合連続アシストを記録し、以来プレミアリーグで13勝6分1敗と好調をキープしています。

ルイス・ディアス、ダルウィン・ヌニェス、コーディー・ガクポを獲得し、「リヴァプール2.0」と呼ばれる改革が進むなかで、アーノルドのパスコースは大きく変化しました。右サイドを主戦場としていた頃は、ボックス左と中央に通すアーリークロスが最大の武器でしたが、CBの前にいることが多い現在は、サラーやショボスライを走らせる縦へのフィードが増えています。

おそらく、アシストは減るでしょう。2019-20シーズンにリーグ最多の382本(1試合あたり10.1本)のクロスを通していたSBは、10試合で46本(同4.6本)に減らしています。その一方で、シーズントータルで5本だったスルーパスは、10試合で10本。これは、ルーカス・パケタとサラーに次ぐ数字です。

チームとともに苦しんでいた時期は、SBとして頭打ちになり、中小クラブに居場所を求めるのではないかと心配したりしました。しかし今は、偽SBとして天下を取る姿を見てみたいと思うようになっています。今週末は、マンチェスター・シティとのシックスポインター。完成度が高い王者に対して、発展途上のリヴァプール2.0はどこまで戦えるでしょうか

もちろんアーノルドは、勝負を左右するキーマンのひとりです。ジェレミー・ドクを封じながら、中央から前線を動かすのは簡単な仕事ではありません。決戦では、9人になったスパーズ戦しか負けていない新機軸のチームが、どんなアプローチでゴールに迫るのかを追いかけたいと思います。


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“新機軸は天下を取るのか?「リヴァプール2.0」の中心人物、アレクサンダー=アーノルドに思うこと。” への6件のフィードバック

  1. 飯田 より:

    スタッツで見るとまた違うかもですが、守備が悪くなりだしたタイミングに関しては、チーム全体のプレス強度が落ちヘンダーソンのパフォーマンスも落ちて右サイドが緩くなったことが最大の要因かなと思います。(私個人の見解です)
    それにつられて守備に対する自信&やる気をなくしていったかなと。批判もかなりされましたし。

    今季の9人になったスパーズ戦もあの時間帯に投入されながら緩慢さを見せてましたし・・・

    賛否両論ありますが、個人的には右SBに戻り、ソボスライの負担を軽減した方がいい気がする派です。
    一発でビッグチャンス作っちゃうから偽SBはロマンあるんですけどね(笑)

  2. アイク より:

    更新ありがとうございます。
    気になっているテーマですが、私も飯田さんに同感で、チームパフォーマンスが影響したと思っています。
    CL制覇当時は攻防一体型チームの一つの完成形だったと思います。中盤が得点以外の全てのことをやっていて、ジニ、マネ、ミルナー、フィルミーノが鬼のように走り回り、キャプテンが鬼の形相でフォローに駆けつけ、アンカーと左SBにはそれぞれ別の鬼がいて、怪我する前のスーパーファンダイクが最終ラインを安定させながら攻撃の起点になっていました。チームのプレスに底上げされていたアーノルドにとっては別ポジションくらい感覚が違うんじゃないかと想像してます。
    ただ、これは代表チームでの不調原因を全く説明できてませんが。笑

  3. makoto より:

    飯田さん、アイクさん、ご意見ありがとうございます。
    前からのプレスが強ければハイラインをキープできて、アーノルドの弱点を突かれなくてすむというのはありますね。だとするとやはり、走力と読みのよさを兼ね揃えたアンカーがほしいですね。マック・アリスターを前で機能させられるように。

  4. アイク より:

    おっしゃる通りと思います。遠藤が化けてくれたら最高に盛り上がるのですが…
    そう言えば、絶頂期にもすでにアーノルド側から攻めるのが対戦相手のセオリーなっていましたね。ファンダイクとロバートソンがいない方というだけでなく、アーノルドがいる方を狙われていたんでしょうね。

  5. ボビー より:

    僕が思うに21/22シーズンはほとんど全ての試合でボールを支配し、ハーフコートゲームをしていました。しかし22/23シーズンではそもそもビルドアップが上手くいかないことが多く、完全に押し込めないためカウンタープレスもかわされることが多かったです。その結果押し込まれたり、決定的なカウンターを受ける機会が格段に増えたと思います。その中でSBのアーノルドは必然的に難しい対応を求められることになるので、守備の欠点が浮き彫りになったのではないかと思います。

    • makoto より:

      ご意見ありがとうございます。
      ラインが下がりましたよね。ワイナルドゥムの存在の大きさを痛感しました。
      チアゴ、カーティス・ジョーンズ、ナビ・ケイタなど中盤の負傷者の多さと、
      前線の入れ替わりが、ビルドアップやプレスに影響を与えた感があります。

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