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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【MAN.CITY×MAN.UTD】戦略明確なマンチェスター・シティ、連携なきライバルを崩してダービー完勝!

完敗でした。「れば・たら」もいえない完敗でした。枠内シュートは、サイドからドリブルで抜け出して角度のないところから狙ったファン・ペルシの左足と、ルーニーの3人抜きのドリブルに並走してパスをもらい、右からフリーで放ったディ・マリアのミドルの2本だけ。前者は、中にパスを入れたほうがチャンスになったシーンで、焦ったファン・ペルシの判断ミス。後者のシーンでジョー・ハートを破るとすれば、左手の上を狙って思い切り蹴り込んだほうが可能性は高かったでしょう。しかし、バレンシアやフェライニならともかく、ディ・マリアの右足にはそこまでの力はありません。ハーフスピードでクロスに飛んだシュートは、余裕をもってジョー・ハートがセーブしました。

特段狙いもなく前にボールを入れ、「後は個人技で何とかしてください」とでもいうような連携なきマンチェスター・ユナイテッドと、本職はSBではない右のバレンシアを狙ってサイド攻撃を決めたマンチェスター・シティ。プレミアリーグ優勝を狙う前年王者と、4位に届くかどうかさえ微妙なアウェイチームの間には、歴然とした戦略の差、チーム力の差がありました。ただでさえマンチェスター・シティが優勢なのに、前半39分にスモーリングが退場となって人数にハンディキャップを抱え、後半にはロホが負傷退場してCBが2人アウト。交代で入ったマクネアにはマンチェスターダービーはまだまだ敷居が高く、彼が入った直後にアグエロの先制ゴールが決まります。

マンチェスター・ユナイテッドは、せめてドローに持ち込みたければ、ロホが去った後はゴール前を頭数で固め、0-1とされた後はフェライニをトップに上げてひたすら放り込むぐらいのリアリティが必要でしたが、ファン・ハール監督の采配はいかにも中途半端。ディ・マリアやルーニーの個人技にまかせきりの攻撃に、コンパニ、デミチェリス、サバレタ、クリシーの堅牢な守備陣は崩れる気配すらありませんでした。

この試合のMVPは、ペジェグリーニ監督でしょう。先週のプレミアリーグでウエストハム、キャピタルワンカップではニューカッスルと連敗を喫した下り坂のチームを、采配が見事に立て直しました。ペジェグリーニ監督の前半の指示は、「開始15分までは中盤のスペースを埋めて速攻を許すな」「マンチェスター・ユナイテッドの攻撃を呼び込んで中盤で奪い、攻撃は両サイド。とりわけ守備が不慣れな右のバレンシアの裏のスペースを突け」だったのではないかと思います。ホームゲームにも関わらず、慎重すぎるぐらいの引き方でゲームに入ったマンチェスター・シティは、最初の15分でマンチェスター・ユナイテッドの攻撃に冷静に対処。ウエストハムのアマルフィタノやニューカッスルのアーロンズに速攻でやられた、前2試合の反省を活かしました。

15分を過ぎると、昨季プレミアリーグ王者がいよいよ狙いの攻撃に入ります。6分に左サイドをアグエロが突破し、強烈なシュートをGKデ・ヘアに放っていたマン・シティは、既に手ごたえを感じていたのでしょう。19分にはアグエロが持ち込んでシュート。20分、狙っていたスペースが空いたのを見てとったセントラルMFのフェルナンドが、今までにない大胆なオーバーラップで左サイドを攻略し、見事な右足アウトで中央のアグエロにどんぴしゃのラストパス。このチャンスは、素晴らしい飛び出しをみせたデ・ヘアがアグエロと接触しながらシュートを足に当てて防ぎましたが、ミルナー、ヤヤ・トゥレ、フェルナンド、クリシーは、自分たちの攻撃は間違っていないと確信したはずです。マン・ユナイテッドは、ボールを支配しているのではなく、持たされているだけ。ペジェグリーニ監督の誘い出しに対抗するなら、ドリブルでボールを持ち込むのではなく、後ろのスペースを空けずにDFからロングボールをファン・ペルシにぶつけてルーニーやディ・マリアが拾うといった「ワールドカップのオランダVSスペイン戦モード」のほうがより効果的だったと思われます。

28分にブリントがヤヤ・トゥレを引っかけてイエローカード。35分にはミルナーがペナルティエリア左を突破。マンチェスター・シティの攻撃は、執拗に左、左、左です。39分、またも左からフリーになりかけたミルナーに、スモーリングが無謀なタックルを仕掛けてホイッスル。既に1枚もらっていたスモーリングは、その瞬間、自らの運命を悟って頭を抱えます。前半は0-0でしたが、敵のCBをレッドカードで1枚追い出し、しつこかったヤヌザイがキャリックと代わっていなくなったのは、ペジェグリーニさんとしては上々の成果でしょう。63分、ついに0-0の均衡を破ったゴールも、やはりバレンシアの裏。ヤヤ・トゥレのスルーパス、クリシーのゴールライン際からの折り返し、アグエロのシュートと、すべてダイレクトでつながった極上のコンビネーションは、堅守チェルシーでも止められなかったでしょう。見た目は派手なゴールではありませんでしたが、連携のクオリティの高さは、今季プレミアリーグの5本の指に入るような一撃だったと思います。

もしかすると、アーセナルやチェルシーは、この日のマンチェスター・シティなら勝ち点3を奪えていたかもしれません。ラファエウが不在でCBが次々と代わったマンチェスター・ユナイテッドの守備が脆かったにも関わらず、1点しか獲れなかったマンチェスター・シティは絶好調時の彼らではありませんでした。それでも、マン・シティが勝ち点3を奪えたのは、「マンチェスターダービーならではのモチベーション、集中力」だったのではないかと思います。ピッチの上のMVPはオフィシャルにはアグエロでしたが、私が選ぶならマン・シティの2人のCB。ルーニーに股抜きを喰らったコンパニよりも、未だフィットしていないマンガラにはない安定感でライバルに決定的なシュートを打たせなかったデミチェリスを指名したくなります。敵ながら、天晴れ。ここまで書いてきて、あらためて思いましたが、やはり完敗、われわれはノーチャンスでした。

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“【MAN.CITY×MAN.UTD】戦略明確なマンチェスター・シティ、連携なきライバルを崩してダービー完勝!” への3件のフィードバック

  1. モウ より:

    マンUの守備はPKを何回か取られてもおかしくないような場面が何回かありましたね〜
    スモーリングの1枚目も不必要なイエローでしたし、2枚目もイエローもらってるのをわかってるなら、あのプレーは…
    チェルシーはルーニーがいないこのマンUに負けたかと思うと、ちょっともったいない感じがします(笑)
    マンUの守備陣はただでさえ不安なのに、怪我人やら出場停止やらで厳しそうですね。キャリックが戻って来たのが、せめてもの救いですかね。

    あとどうでもいいことですが、この日のシティならチェルシーが勝ち点を奪えたのではないかっていうのが、ちょっと気になっちゃいました(笑)
    去年もダブルして、今年も引き分けだったので。

  2. makoto より:

    モウさん>
    おっしゃるとおり、前半終了間際のロホのプレイがいちばん危険でした。スモーリングは残念です…。チェルシーの件は、私の言葉足らずで、「勝ち点を」ではなく「勝ち点3を」です。モウさんにいただいたような誤解を避けたかったので、訂正させていただきました。いいたいのは、「マン・ユナイテッド以外のプレミアリーグ上位クラブは、この日のマン・シティには確実に勝てていたのではないか、そのくらい、彼らにいいときの迫力はなかった」ということですので。ご指摘ありがとうございます。

  3. slash より:

    個人的なMOMはヤヤですね。
    今シーズンあまり見られなかった重戦車ドリブルも見られましたし、シルバのいない中で中盤での存在感は際立っていたと思います。
    マンガラですが、デビュー戦のチェルシー戦では素晴らしかったのに、その後はイマイチですね。管理人さんはどうしてだと思いますか?

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