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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Arsenal×Crystal Palace】重責から逃げ続けたCB…這い上がれ、シュコドラン・ムスタフィ!

クリスタル・パレスはアウェイで強く、8勝2分8敗はアーセナルを2ポイント上回るプレミアリーグ6位です。敵地で3ゴールを挙げた試合が5つもあり、この数字はマンチェスター・シティに次いで2位。優勝を争う2チームのホームに乗り込んでいずれも3発を叩き込むという離れ業は、ビッグ6でも…いや、バルサやレアル・マドリードでも簡単にできることではありません。彼らがアウェイで臆せず戦えるのは、敵地で相手をリスペクトしない2人のトリックスターがいるからでしょう。

アウェイマイスターのウィルフリード・ザハと、大物キラーのアンドロス・タウンゼント。ザハの1試合あたりのドリブル成功率3.2はアザールに次ぐ2位で、今季プレミアリーグで決めた9ゴールのうち8つまでを敵地で決めています。タウンゼントはトータル4ゴールに留まっていますが、そのうちの3つはチェルシー、マン・シティ、リヴァプールとのアウェイゲームでゲット。前線にロングフィードを入れ、落ちてきたボールを左右に展開するシンプルなアタックは、強豪クラブが最も嫌がるスタイルです。

曲者をホームに招いて2-3で敗れた日曜日のアーセナルですが、この試合は彼らの術中にはまったというよりも、自滅という表現のほうがぴったりです。フットボールは11人VS11人で戦うものですが、プレミアリーグ34節のエミレーツは10人VS12人…いや、「アーセナルは誤審を連発するレフェリーを身内に抱えていた」というべきでしょうか。シュコドラン・ムスタフィ、逆ハットトリック。ビッグ6のゲームで、ひとりの選手がこれだけマークを外すのを見たのは初めてではないかと思います。まずは、ガナーズの3つの失点シーンを振り返ってみましょう。

アウェイチームの先制ゴールは、17分のセットピース。ミリヴォイェヴィッチが右サイドからFKを蹴った瞬間、ラインの裏に走ったベンテケに対してムスタフィは完全に出遅れました。背後にいたジェンキンソンがオフサイドを取り損なったという見方もできますが、ヘディングがうまいストライカーを自由にしていい理由にはなりません。SBが残っていたのが見えなかったムスタフィは、シュートの瞬間に手を上げてオフサイドを主張しておりましたが、ボールがネットを揺らした後もホイッスルは鳴りませんでした。

ハーフタイムは0-1。攻めに転じるべく2枚代えを敢行したエメリ監督は、ムスタフィを残してマヴロパノスを下げてしまい、結果的にはこのチョイスが2つの失点の呼び水となりました。ラカゼットのスルーパスを受けたエジルが、角度のないところからニアに決めて1-1としたアーセナルは、63分に勝ち越しゴールを許してしまいます。敵陣からの長いFKは、何でもないボールに見えましたが、競り勝ったベンテケがヘッドで逸らしてラインの裏に転がります。ザハについていたムスタフィが体勢的には有利。全力で追ってスライディングでクリアしていれば、それで終わりでした。

ところが、ムスタフィは一瞬立ち止まり、体を当ててザハを弾こうとしたために事件が起こりました。アタッカーに内側からすり抜けられるというのは、CBが最もやってはいけないエラーです。ザハにかわされた瞬間、ムスタフィは自らのプレイ選択ミスの重大さに気が付いたのでしょう。とっさに両手を開き、ベルント・レノが飛び出してこなかったのが悪いと責任転嫁してしまいました。同い年の守護神は、「オレじゃねーし」とでもいうようにCBに怒鳴り返しています。駆けっこが始まった瞬間はザハが明らかに不利でした。飛び出しが的確なマン・シティのエデルソンでも、このシーンは味方にまかせたのではないでしょうか。

致命的な3点めは69分。ムスタフィはおそらく、メンタルをやられて弱気になっていたのでしょう。ミリヴォイェヴィッチがCKを蹴ってから約3秒、彼の動きはハリウッド映画のゾンビのように曖昧かつ不可解でした。ベンテケに向かうボールを見て、マークしていたマッカーサーを手離すと、ストライカーの前でクリアしようとするかと思いきや、背後にまわってヘディングを傍観。少し前に彼が付いていたマッカーサーがフリーでコースを変えると、すぐさまレフェリーに旗を請う目線を送ります。クヤテが触っていればオフサイドでしたが、18番はまったく問題なし。3つの失点は、いずれもムスタフィがチェックすべきだった選手によってもたらされました。レフェリーのせい、GKのせい…いいえ、どんな状況でもアタッカーをストップするのがあなたのミッションです。

77分にオーバメヤンが美しいステップで持ち込み、今季プレミアリーグ19発めを叩き込みましたが、ガナーズは1歩及ばずホームでの連勝記録を10で止められました。ああ、ムスタフィ。プレミアリーグ移籍初年度に、デビュー戦以来15試合連続無敗という記録を残したCBは、グーナーの希望でした。縦パスのタイミングを読んで、前で奪うアグレッシブなプレイが素晴らしく、守備の課題の多くは彼が解決してくれるとさえ思えました。あれから2年。今季は、問題の多くが彼の周辺で起こっています。不安定な守備は、自信喪失に起因しているのではないでしょうか。クリスタル・パレスの屈強なストライカーと稀代のドリブラーを前に、責任から逃げようとしているようにすら見えたCBは、あまりにも明確な敗因でした。

多くのグーナーが、彼を売るべきと主張しているものと思われます。現地メディアがサポーターに投票を促す「stay or sell」に参加せよといわれれば、私も同じほうに手を挙げるでしょう。しかし一方で、心の奥底ではこんなふうに祈っていたりします。「次こそ結果を出してくれ」「チームを離れる日まであがき続けてくれ」と。今は眩しいサラーもチェルシーでは振るわず、デパイやファルカオはフランスで復活を遂げ、3年前にチームの混乱のなかで不振に陥ったアザールも次のシーズンで真価を発揮しました。まだ27歳。早くトップフォームを取り戻せば、フットボール選手としてのピークを迎える時期がやってきます。彼が素晴らしいプレイを披露してくれたら、盛大に拍手を送ろうと思います。苦境を乗り越えた選手の鮮やかな復活も、フットボールのおもしろさを構成するひとつのエッセンスなのですから。

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“【Arsenal×Crystal Palace】重責から逃げ続けたCB…這い上がれ、シュコドラン・ムスタフィ!” への4件のフィードバック

  1. りっきー より:

    ムスタフィに関してはもうほとほと愛想がつきました、、、
    致命的なエラーが多いのになぜ使い続けるのか理由が聞きたいです。
    レフェリーのジャッジやスタメンの是非、モチベーションなど色々文句はありますが、、
    アウェイゲームを多く残している中でホームでの負けはあまりにも痛いです

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    Talismanと言われてた頃が懐かしい…

  3. ノリスケ より:

    ムスタフィは一刻も早く消え失せるべきですね。

    —–
    地上空中デュエル勝率、インターセプト数、タックル成功率、そしてディフェンシブエラー数…
    諸々のスタッツでリーグ最高クラスを叩き出す奇特な選手です、足下も上手いですし(クロスはひどいですが)、精神面の問題が大きいのでしょうか
    こういう選手を愛人愛人言われながら頑なに使い続けて、いつの間にワールドクラスに育て上げて来たのがヴェンゲルですね。エジルが加入理由に挙げた「絶対的な信頼」ってやつです。
    23にしてヴェンゲル最大の失敗作と言われたソング、事あるごとにペルシに怒鳴られてたラムジー
    エメリには選手を信頼して、守り続けて欲しいですね。全て移籍金換算されるこの世知辛い時代だからこそ。

  4. トマシュ より:

    ムスティ。。。
    這い上がれ、ですか。偏プレ的やさしさに言葉がありません。

    擁護派の自分もさすがに。

    だめだよ、あれは。アグエロに背中小突かれて勝手にプレーを止めてゴール許したのを思い出しました。確かに人のせいにするよなぁ。レノ悪くねぇだろ、いくらなんでも。士気に影響するわ。3点取られたのと同じぐらいの衝撃があったんじゃないか?ファンから愛想を尽かされて当然。

    加入当初は今年のウナイと同じぐらいの無敗記録作ってたような気がするんだけれど。イリュージョンだったのかな。

    ツェフとのお笑いパス交換定型からおかしくなっていったような気がする。チーム内でも変な空気になってるんじゃないのかしら。

    擁護派の自分もさすがに。

    それはそうとすごいねプレミア。今節4チームで勝ち点1て。ちなその内の1チームはCL4強らしい。

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