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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

他クラブは彼らの不正を知っていた?プレミアリーグが導入したSCRはフェアな世界を実現できるのか?

2017年1月のある水曜日。朝のオフィスでメールをチェックしていたマンチェスター・シティの幹部は、UEFAの職員から届いたメールに目を留めました。文面を追うと、財務コンプライアンス報告書へのリンクが付いています。当然のようにダウンロードボタンをクリックした瞬間、プレミアリーグの歴史が変わりました。

ポルトガルのハッカーであり、「Football Leaks」の創設者でもあるルイ・ピントのフィッシング詐欺によって、外部の人間には絶対に見られたくない数千通のメールと機密文書が漏洩しました。リヴァプールやアーセナルの渾身のアタックでも容易に崩れなかったマンチェスター・シティは、マウスのボタンを指先で触っただけで絶望的な状況に追い込まれてしまったのです。

アブダビ・ユナイテッド・グループによる「偽装資金提供スキーム」とその後の隠蔽に関する容疑は115件に及び、1件を除くすべてが有罪判決を受けています。その数ヵ月前に、74件の財務規則違反をFAに申告したチェルシーは、1000万ポンドの罰金と2度の補強禁止処分で済んでいます。補強禁止には2027年6月30日までの執行猶予が付いており、いわば「軽微な罰金刑」です。

「不正を行ったオーナーは退場」「自首」「調査に協力」「罪状を全面的に認めた」という4点セットを揃えたクラブが罰金のみで、無罪を主張したクラブがプレミアリーグから追放される可能性ありと聞くと、「公務執行妨害」が重すぎるように見えます。これについては、「4700万ポンド対9億ポンド」に調査への非協力や情報の隠蔽が乗っかったと見做すと妥当なのでしょうか。

いずれにしても、「稀代のハッカーによるインターセプト」「ロシアがウクライナに侵攻」というような未曽有の事件がなければ、不正は発見されなかったということです。プレミアリーグは、マジで捜査する気があるのか? 実は他にもやばいクラブがあるのではないか? 負債まみれのマンチェスター・ユナイテッドは「シロ」か? ひとたび疑い出すとキリがありません。

「テレグラフ」のジェレミー・ウィルソン記者は、プレミアリーグのクラブにいた複数の元役員や幹部クラスに取材し、「PSRはスイスのチーズみたいに穴だらけで役に立たない」「マン・シティやチェルシーの怪しいディールは噂になっていた」といった話を引き出しています。選手の争奪戦で、「受け入れられない取引」を代理人に求められるケースもあったそうです。

あるクラブの元幹部が、マン・シティの偽装のスキームについて「誰もが疑っていた」と証言していたとのこと。この件で驚きだったのは、独立委員会の調査結果より、ハッキングによって漏洩したことだったといいます。取材を受けた人たちの多くは、「プレミアリーグはPSR違反の調査に積極的ではなかった」と指摘しています。膨大なコストとパワーがかかるからでしょう。

PSRの元々の目的は、ポーツマスのような破綻の予防でした。今回の件で明らかになったことのひとつは、確信犯で組織的な偽装をされると違反認定に時間を要し、ペナルティが下される頃には莫大な利益が生まれているという事実です。プレミアリーグがPSRを見限り、2026-27シーズンからSCR(スカッド・コスト・レシオ)に切り替えたのは、限界を認めたからだと思われます。

SCRは、「選手と監督のサラリー、代理人マージン、移籍金の減価償却費などの合計をフットボール関連収入の85%以内に抑えなければならない」と定めています。3年の損益を見ていたPSRに対して、SCRは単年評価なので、発覚が遅れるリスクは軽減されました。スポーツのフェアネスに関する費用のみを対象としたのは、調査のタスクとフローをシンプルにするためでしょう。

「85%から115%までは罰金」「115%を超えると6ポイント剥奪、650万ポンドの超過ごとに1ポイント加算」と、ペナルティのルールも明快です。「10年戦争」で激痛の授業料を支払ったプレミアリーグは、両者ともに大流血でノックアウト寸前の有刺鉄線電流爆破デスマッチを乗り越え、ファンの信頼を得られるのか。新たな制度の概要を見ると、よりフェアな世界を実現できそうですが…。


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