偏愛的プレミアリーグ見聞録

バルセロナ復帰が噂されていたネイマールは、コロナウイルスによるパンデミックの影響下でディールは成立しないと考え、パリ残留を決断したといわれています。バイエルンが買い取りを拒否したコウチーニョも、プレミアリーグに買い手はなく、再びバルサのシャツを着ることになりそうです。チェルシーが狙ったいたドリース・メルテンスもナポリとの契約延長に合意。メディアを賑わしていた大型補強の噂が次々に立ち消えるなか、現状でも実現しそうなのはレロイ・サネのドイツ行きぐらいでしょうか。バイエルンは、今季プレミアリーグで出場ゼロのスピードスターに背番号10を用意しているといわれています。

ジェイドン・サンチョは動くのか。ティモ・ヴェルナーはどうするのか。ここ数年、夏の主役を張り続けたカリドゥ・クリバリは、ナポリで30回めのバースデーを迎えるのか。10年過ごしたマンチェスター・シティから離れると明言したダヴィド・シルヴァは、次のクラブを決められるのか。随所で風船が萎む音が聞こえてくるような世知辛い状況のなかで、「彼はステップアップするだろう」と太鼓判を押されている選手がいます。ウォルヴァー・ハンプトン・ワンダラーズの馬車馬、アダマ・トラオレ。プレミアリーグでドリブル成功数No.1のウインガーは、マンチェスター勢とリヴァプールのターゲットと報じられています。

確かに、それぞれ獲得に向かう動機はあります。マンチェスター・ユナイテッドにとっては、ジェイドン・サンチョに1億ポンドを投資できなかったときのオプション。レロイ・サネを失うことになりそうなマンチェスター・シティは、ラウタロ・マルティネスなど海外のアタッカーが難しければ、こちらに目を向けるかもしれません。シャキリに退団の噂があるリヴァプールも、ヴェルナーの決断次第でウインガー狙いに切り替える可能性はなきにしもあらず。「アダマ・トラオレは不要でしょう」と切って捨てられるクラブはありません。

それにしても、奇妙です。4月の初めに「ウルヴスは、アダマ・トラオレを7000万ポンド（約92億円）以下で売る気はない」と報じられていたのですが、コロナウイルス蔓延の影響で選手の値段が下落するなかでも、「彼はさほど下がらない」という見方があります。どのクラブにとっても本命ではないのに、本命と同等以上の高額案件…⁉今季の公式戦で43試合6ゴール10アシスト、プレミアリーグ4ゴール7アシストは決して悪い数字ではありませんが、4歳年下のジェイドン・サンチョの公式戦36試合17ゴール19アシスト＆ブンデスリーガ24試合14ゴール16アシストという素晴らしすぎるスタッツをチラ見してしまうと、1年待ってでもそちらでお願いしますといいたくなります。

ビッグクラブからの熱い視線には、「ゴールに向かうプレイを叩き込んだらとんでもない選手になる」という期待がこもっているのでしょうか。確かに、アンディ・ロバートソンをちぎり続けた突破力は世界屈指ではあるのですが…。「彼はとても魅力的なプレーヤーだ。トランスファーマーケットがいつもの状況なら、間違いなく物事は簡単に片付いていたはずだ。この特殊な状態ができるだけ早く正常に戻ることを願っている」。代理人のホセ・ロドリ・バステル氏は、やはり値崩れを懸念しているようです。アダマ・トラオレは、ステップアップすることができるのでしょうか。彼にとっては最高のタイミング、しかしクラブにとっては最悪のコンディションです。ウルヴスの値付け次第ですね…！