偏愛的プレミアリーグ見聞録

マウリシオ・ポチェッティーノ監督を迎えて巻き返しを図るチェルシーは、順調に戦力整理を進めています。カイ・ハヴェルツはアーセナル、コヴァチッチはマン・シティ。クリバリ、メンディ、カンテはサウジアラビアのプロリーグで、ロフタス＝チークはミランへの移籍が決まっています。

メイソン・マウントは、マンチェスター・ユナイテッドのメディカルチェックを完了。アスピリクエタはブルーズとの契約を解除し、フリーでアトレティコ・マドリードに加わるようです。プリシッチはミランか、リヨンか。さらにオーバメヤン、ルカク、ツィエク、ハドソン＝オドイの居場所が決まれば、新戦力の獲得に集中できます。

あらためて、現在のスカッドをチェックしてみましょう。GKはケパ、ベッティネッリ、スロニーナですが、ポチェッティーノ監督は納得していないかもしれません。最終ラインは、リース・ジェームズ、マロ・グスト、チアゴ・シウバ、フォファナ、バディアシル、トレヴォ・チャロバー、コルウィル、チルウェル、ククレジャ。ここに新たな選手は必要なさそうです。

最前線とウイングも、問題なしです。センターはニコラス・ジャクソンとエンクンク、アルマンド・ブロヤ、ダトロ・フォファナ。サイドはムドリク、ノニ・マドゥエケ、ルイス・ホール、ディエゴ・モレイラと、ブレイクが期待できる逸材が揃っています。スターリングは、前線ならどこでもOK。新戦力がうまくはまれば、プレミアリーグ38戦38発の貧攻は改善されるでしょう。

やはり問題は、中盤です。主軸がごっそり抜けたセントラルMFは、エンソ・フェルナンデスとアンドレイ・サントスのみ。コナー・ギャラガー、チュクエメカ、ハッチンソンは、ウェストロンドンでレギュラーとして戦った経験がありません。7月になってから獲得したアレックス・マトスは、将来のための投資でしょう。

現在、獲得候補といわれているのは、「ラツィオから3400万ポンドでOKと売り込みがあった」と伝えられるセルゲイ・ミリンコヴィッチ＝サヴィッチと、6000万ポンドのオープニングオファーを拒否されたモイセス・カイセドです。ブライトンは1億ポンドを主張しているようですが、冬にアーセナルが提示した7000万ポンドを超えれば、合意に至るのではないかと思われます。

リヴァプールはショボスライ、アーセナルはデクラン・ライス、マン・ユナイテッドはメイソン・マウントに高額の移籍金を費やしており、マン・シティが動く気配はなし。ブルーズは、ライバルのハイジャックを気にせず交渉できそうで、さほど時間をかけずに決められるでしょう。

ラツィオのネタを記事にした「フットボールロンドン」のサム・ヒル記者は、カイセドに加えてロメオ・ラヴィアに手を伸ばす可能性があると報じていますが、こちらはレッズやガナーズとぶつかりそうです。5000万ポンドまで高騰するなら、昨季公式戦で47試合11ゴール8アシストのミリンコヴィッチ＝サヴィッチのほうが賢いお買い物になるのではないでしょうか。

トッド・ベイリーの初年度に6億ポンドの大投資を敢行し、ダブついた戦力を一気に放出しているのを見て、「チェルシーは相変わらずパニックに陥っている」と笑う人もいるでしょう。しかし冷静になって、放出した選手と現有戦力を並べてみると、よくぞ短期間でここまで整理したと拍手したくなります。

中盤を強化し、GKまで押さえられれば、来季のスカッドは完成ですね。プレミアリーグ12位に沈んだクラブは、ポッターとランパードの下で起こった混乱がなかったかのように、上位に食い込んでくるのではないかと警戒しています。開幕戦は、スタンフォード・ブリッジでリヴァプール。既にテンションが上がりかけています。