偏愛的プレミアリーグ見聞録

ブンデスリーガで11連覇。バイエルン・ミュンヘンは、欧州で最もタイトルに近いクラブです。プレミアリーグやワールドカップの得点王など、個人タイトルは多々あれど、チームとしては準優勝のメダルしか持っていないハリー・ケインには魅力的に映るでしょう。

ドイツメディア「ビルト」によると、イングランド代表のキャプテンを手に入れたいトーマス・トゥヘル監督は、既に本人と何度も会っており、チャンピオンズリーグ制覇という大きな目標について話を重ねているそうです。クラブのエースがよその監督と隠れて話していると知ったダニエル・レヴィ会長は激怒し、態度を硬化させていると伝えられています。

フットボールの世界で、最もタフな交渉相手のひとりといわれるスパーズの会長は、これまでは「売らない」のひとことで話を終わらせてきました。しかし今は、事情が違います。ハリー・ケインは、「1年待ってフリーで出ていく」という強力なカードをチラつかせています。契約延長を拒否し続けられたら、損得勘定ができるレヴィ会長は考えをあらためる可能性があります。

6000万ポンドの1回めのオファーは、スパーズが拒否。ノースロンドンは、最低でも8500万ポンド（約157億円）を超えてこないと交渉の余地がないといわれています。契約期間が残り1年の29歳としては法外な値段ですが、プレミアリーグ通算317試合213ゴール、昨季は38試合30ゴールというスタッツを突き付けられると、思わず納得してしまいそうです。

「ガーディアン」のデヴィッド・ハイトナー記者とジェイコブ・スタインバーグ記者は、「トランスファーマーケットが終わるまで、ハリー・ケインは新たな契約書にサインしない」とレポートしています。現在の週給20万ポンドからの大幅な増額は、彼をほしがるビッグクラブへのアドバンテージにはならないでしょう。

トゥヘル監督とは会談の場をもったハリー・ケインは、アンジェ・ポステコグルー監督とは未だ会っていないそうです。バイエルン移籍に合意したと伝えられるストライカーは、新たなボスの話を聞いて翻意するのでしょうか。アラン・シアラーのプレミアリーグ史上最多ゴールまで47。イングランドに残って、大記録を更新する瞬間を見たいのですが…。

マンチェスター・ユナイテッドが撤退したと報じられた今、ビッグマネーを携えてレヴィ会長にコンタクトを取ろうとするプレミアリーグのクラブが出てくるとは思えません。バイエルンか、ワンクラブマンか、1年待ってフリーで移籍か。後釜候補のオシムヘンに「スパーズには行きたくない」といわれたレヴィ会長は、過去最高に難しい決断を迫られています。